株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス

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TNFDに基づいた情報開示

 

はじめに

PPIHグループは、企業原理「顧客最優先主義」のもと、地域のお客さまの暮らしを支え、お買い物の楽しみを提供することを第一に、本業の総合小売業の事業活動を通じて環境・社会における重要課題(マテリアリティ)の解決に取り組んでいます。また、ステークホルダーと対話を重ねながら、持続可能な社会の実現と中長期的な企業価値の向上の両立をめざしています。
変化の大きな時代において、当社グループでは中長期経営計画「Visionary 2025/2030」のもと、ESG(環境・社会・ガバナンス)課題への対応の推進・強化を図ってきました。現在は、長期経営計画「Double Impact 2035」のもと、これらの取り組みを継続し、持続可能な社会の実現と企業価値向上の両立をめざしています。

自然関連分野においては、「気候変動への対応」や「人権・環境に配慮した商品調達と責任ある販売」、「サプライチェーンを通じた社会・環境課題の解決」を重要な取り組みとして位置付け、各種施策を進めています。
また、「サステナビリティ基本方針」のもと、本業である総合小売業を通じて環境・社会課題の解決に取り組んでいます。これを具体化するため、「環境方針」「人権方針」「サステナブル調達方針」及び「サプライチェーン行動規範」を策定し、持続可能性(気候変動、環境汚染の防止、生物多様性保全への影響)に配慮し、環境負荷の低減に努めるとともに、サプライチェーンを含む人権の尊重を重視しています。

PPIHグループの重要課題(マテリアリティ)の図。詳細は上記に記載しています。

近年、気候変動に加え、生物多様性の損失や土地利用の変化、水資源などの自然関連課題が顕在化しており、事業の持続性を考える上での重要性が一段と高まっています。
当社グループは、食品・日用品・衣料品など多様な商品を取り扱うとともに、全国に多数の店舗を展開しています。この事業構造を通じて、原材料調達から商品供給、店舗運営に至るまで、自然資本に幅広く依存すると同時に、自然環境へ影響を与えています。特にPB/OEM商品や食品分野の強化を成長戦略の中核の1つとして位置付ける中、原材料の生産環境や調達地域の自然環境との関係性は、サステナビリティ経営において重要性が高まっていると認識しています。
こうした認識のもと、当社グループは、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の枠組みを参考に、事業活動における自然への依存・インパクトを整理し、自然関連リスク・機会の分析を進めるとともに、リスク管理の高度化を図っていきます。
長期経営計画「Double Impact 2035」で掲げる企業ブランド価値の向上を成長戦略の柱として、積極的に開示を行い、ステークホルダーとのエンゲージメントを通じて持続可能な社会の実現に貢献していきます。
当社グループは、企業理念集『源流』に定める企業理念・行動指針をサステナビリティにおいても徹底し、事業活動を通じた社会への貢献とグループ成長の両立に果敢に挑戦していきます。

 

一般要件

マテリアリティの適用

本開示では、「ダブルマテリアリティ・アプローチ」を採用しており、財務への影響(環境や自然資本が事業活動に与えるインパクト)と、事業活動による環境や自然資本への影響(インパクトマテリアリティ)の両方を考慮しています。

開示のスコープ

当社グループ事業のうち連結売上高の80%以上を占める主要事業である国内小売事業を本開示のスコープとしました。評価対象は、直接操業である店舗販売、及び国内店舗で取り扱う主要商品の原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでの全バリューチェーンを評価対象としました。これらの評価対象に対して依存・インパクトの評価を実施し、店舗販売におけるリスク・機会と、商品バリューチェーンについては特に依存・インパクトが大きいとされた原材料調達・採掘のプロセスに関連するリスク・機会を開示しています。

自然関連課題がある地域

本開示では、国内小売事業の国内拠点666店舗※1を対象に、店舗周辺の自然環境の状況を踏まえたロケーション分析を実施しました。店舗販売という操業特性上、自然資本への直接的な依存・インパクトは相対的に限定的であることを判明し、Protected Area(PA)※2及びKey Biodiversity Area(KBA)※3との空間的な近接性を考慮したスクリーニングを行い、優先的に管理すべき拠点及び管理上の重要性が高い拠点を特定しました。

※1 LEAP評価の実施を開始した2026年1月28日時点

※2 PA:Protected Area。国立公園や野生動物保護区など様々な指定によって法的に保護され、保全目的で管理されている地域。

※3 KBA:Key Biodiversity Area。生物多様性の持続性に貢献している地域として定義されている場所。

他のサステナビリティ関連の開示との統合

当社グループでは、2022年2月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」に賛同し、TCFDの枠組みに基づいたシナリオ分析と開示に取り組んできました。当社グループの事業活動は、土壌、水資源、気候条件、生態系といった自然の恵みに支えられており、気候を含む自然資本と密接に関わっています。気候変動と自然資本は相互に影響し合う関係にあることを認識し、本開示においてはTCFDの枠組みに基づく気候関連開示との整合性も重視しています。今後、TCFD及びTNFD開示の統合も検討し、包括的な環境情報開示を目指します。

検討される対象期間

本開示の評価・分析においては、現時点では明確な時間軸を設定せず、主として当社グループの国内小売事業の操業内容や地理的条件に基づく評価を実施しています。今後、当社グループの長期経営計画「Double Impact 2035」を踏まえ、時間軸を考慮した評価へ段階的に進めていく方針です。

先住民族、地域社会と影響を受けるステークホルダーとのエンゲージメント

当社グループは、総合小売業として多様なステークホルダーと関わりながら事業活動を行っており、お客さま、お取引先さま、従業員、株主・投資家、地域社会・自治体との対話を重視しています。 商品調達においては、「PPIHグループ サステナブル調達方針」及び「サプライチェーン行動規範」に基づき、取引先との継続的なエンゲージメントやモニタリングを通じて、人権・環境面のリスク把握と是正を行っています。また、人権への負の影響に対応するための相談・通報窓口を整備し、適切な調査及び是正措置を実施しています。
さらに、当社グループは、店舗を地域社会との重要な接点と位置づけ、地域住民や次世代とのエンゲージメントを推進しています。店舗では、出張講座等を通じて、環境保全活動や環境に配慮した商品選択に関する理解促進を図るとともに、専門学校の学生と連携した水槽メンテナンスや移動式水族館の開催等により、海洋生物の生態や環境課題に関する学習機会を提供しています。これらの取り組みを通じて、消費者行動を通じた間接的な自然への負の影響低減に資する意識醸成を行っています。

 

ガバナンス

監督、執行体制

気候変動・自然関連課題を含むサステナビリティへの対応は、担当役員である取締役 兼 常務執行役員CAOのもと、サステナビリティ委員会が対応策を企画・立案し、グループ会社の事業活動に反映しています。
サステナビリティ委員会は、サステナビリティへの取り組みの進捗や目標達成状況について、年1回以上、取締役会に報告を行っています。
サステナビリティ委員会は、執行役員IR本部本部長を委員長におき、月に1回開催しています。気候変動・自然関連課題を含むサステナビリティ諸課題への対応について下部組織の分科会より報告を受け、目標設定・進捗管理・モニタリングを行っています。また、サステナビリティ経営の専門知識を有する社外委員、一般社団法人サステナビリティ経営研究所 代表理事の冨田秀実氏と定期会合を行い、専門的観点をもって取り組むことができる体制を構築しています。
なお、取締役15名のうち、9名が「ESG・ダイバーシティ」に関するスキルを有しています。

ガバナンス:気候変動への対応 体制図。詳細は上記に記載しています。
気候変動・自然資本に関わるガバナンス体制と役割、報告・審議実績
組織 メンバー 役割 報告・開催数 26年6月期
主な報告・審議事項
取締役会 取締役
  • 気候変動・自然関連課題への対応の進捗や目標達成状況に関してサステナビリティ委員会から年1回以上報告を受け、自然関連リスク及び機会を監督
  • 気候変動・自然関連課題に関する方針・戦略・重要な取り組みに関する承認
年2回
  • 環境目標に対する進捗報告
  • ESG評価に関する報告
サステナビリティ委員会 【委員長】
執行役員 IR本部本部長
【委員】
関連部署責任者(環境対策、設計、施設管理、災害対策、危機管理、ストアコンプライアンス、商品調達部門、品質管理、公正取引管理、法務)
【社外委員】
冨田秀実氏(一般社団法人サステナビリティ経営研究所 代表理事)
  • PPIHグループにおける気候変動・自然関連課題に関する方針・戦略の検討、リスク管理及び対応策の協議、新規取り組みの実施決定
  • 取り組みの企画・推進はサステナビリティ委員会の下部組織である各分科会(気候変動シナリオ分析・CO₂削減・廃棄物削減・プラスチック削減)が主導し、グループ各社が実行
  • 各分科会の責任者を務めるサステナビリティ委員が、取り組みの進捗管理・モニタリングを行い、サステナビリティ委員会に報告
年12回
(月1回)
  • TNFD開示対応報告
  • TNFD開示に関する勉強会の実施と概要報告
  • 脱炭素目標に対する進捗報告
  • 太陽光発電設備及び省エネ機器の導入状況報告
  • 食品リサイクル・食品ロス削減の取り組み報告
  • 店舗サービスに関わるプラスチック削減目標に対する進捗報告
  • サプライチェーンにおける人権・環境対応の進捗報告
  • ESG評価に関する報告

ステークホルダーに関する人権方針・エンゲージメント活動

PPIHグループは、総合小売業として、日々多くのお客さまに商品・サービスを提供するとともに、国内外の多様なお取引先さまやサプライチェーン上の事業者、ならびに多数の従業員と事業活動を行っています。当社グループは、お客さまに加え、お取引先さま、従業員、株主・投資家、地域社会・自治体等の多様なステークホルダーとの対話を重視しています。ステークホルダーとのコミュニケーションを通じて課題や期待を把握し、信頼関係と協働関係を構築することが、持続可能な社会の実現につながるものと考えています。
このような事業特性を踏まえ、「PPIHグループ 人権方針」を定め、当グループに関わるすべてのステークホルダーの人権尊重に向けた取り組みを進めています。また、関連する法規制を遵守し、世界人権宣言、国際人権規約、ILO中核的労働基準、ビジネスと人権に関する指導原則等の国際行動規範を尊重します。

当社グループにとって、商品調達を通じて形成されるサプライチェーンは事業の根幹であり、その過程で生じ得る人権・労働、安全衛生等の課題への対応は重要な経営課題(マテリアリティ3 持続可能な商品調達と責任ある販売)の1つです。PPIHグループでは、「PPIHグループ サステナブル調達方針」(以降は、「調達方針」)及び「PPIHグループ サプライチェーン行動規範」(以降は、「行動規範」)を策定し、商品調達において、サプライチェーン全体で人権及び環境に配慮した責任ある調達を推進しています。
「行動規範」では、人権の尊重、労働安全衛生の管理、気候変動・生物多様性などに関連する環境保護、地域社会への貢献などを定めており、PB/OEM商品を取り扱うお取引先さま及び新規取引に対して、「調達方針」への賛同、「行動規範」への遵守に関する誓約書の提出を求めています。加えて、お取引先さまを対象とした説明会の実施、自己評価質問票(SAQ)や第三者監査の運用を通じて、サプライチェーン上の人権リスクを把握し、課題が確認された場合には是正に向けた対話やフォローアップを行うなど、継続的なエンゲージメントを実施しています。
また、当社グループでは、人権への負の影響が生じた、または生じる可能性がある場合に備え、救済措置の一環として、相談・通報を受け付けるホットラインを設置しています。寄せられた相談・通報については内容を精査のうえ、必要な調査及び是正措置を講じることで、サプライチェーンを含む事業活動全体における人権尊重の実効性向上に努めています。

これらの人権方針、救済措置の運用状況、ならびに取引先・取引先以外のステークホルダーとのエンゲージメントの実施状況については、サステナビリティ委員会やコンプライアンス委員会を中心に経営陣がモニタリングを行っています。重要な取り組み内容や進捗状況は取締役会に報告され、取締役会は、人権尊重の取り組みが事業活動及びサプライチェーン・マネジメントに適切に組み込まれているかを監督し、必要に応じて方針や施策に関する指示・助言を行っています。

 

戦略

スコーピング

1.自然への依存とインパクト

当社グループの事業は、食品や日用品をはじめとする多様な商品をお客さまに提供することを通じて成り立っており、農産物・畜産物・水産物といった自然由来の資源の利用が不可欠です。これらは、土壌、水資源、気候条件、生態系といった自然の恵み(生態系サービス)に支えられています。また、当社グループのバリューチェーンは、原材料の調達から物流、店舗運営、商品・サービスの提供、廃棄・リサイクルに至るまで広範に及んでいます。これらの各段階において自然への依存が存在すると同時に、資源採取、土地利用、温室効果ガス排出、排水・廃棄物の発生等を通じて、自然へのインパクトが生じています。
こうした自然との関係性を踏まえ、当社グループは、事業全体における自然への「依存」、「インパクト」、これらに起因する「リスク」、「機会」を体系的に把握し、バリューチェーン全体を対象とした管理・対応を行うことが、事業の持続的成長に不可欠であると認識しています。

PPIHグループと自然の関係概念図
PPIHグループと自然の関係概念図

2.本開示の評価対象

当社グループの事業は国内外の小売事業の他、流通、不動産、金融サービス等、多岐に渡ります。 本開示では、その中でも当社グループの主要事業である国内小売事業を対象に選定し、直接操業である店舗販売及び国内店舗で販売する主要商品のバリューチェーンに対し評価を行いました。

国内小売事業のバリューチェーン

依存・インパクト

1.分析プロセスの概要

国内小売事業の評価にあたり、直接操業である店舗販売(以下、店舗販売)と、主要商品のバリューチェーン(以下、商品バリューチェーン)に分けて整理を行いました。主要商品は原材料や製造プロセスに応じて7カテゴリー・34グループに分類し、そのカテゴリーごとにバリューチェーンを整理してENCORE※4を用いた評価を実施しました。(評価プロセス詳細は「リスクとインパクトの管理」参照)

※4 ENCORE:自社セクターの自然に与える依存・インパクトの重要度を評価するツール

評価時に整理した主要商品のカテゴリーとグループ
商品カテゴリー 商品グループ
食品・飲料 ペットフードを含む「食品」、「飲料」の2グループ
日用雑貨・医薬品 トイレットペーパーなどの紙製品、化学素材がメインの洗剤、食器、医薬品などの6グループ
携行品・嗜好品 時計、アクセサリー、タバコなどの4グループ
家電製品・金属類調理器具 家電製品、スマホ機器など工業素材がメインの5グループ
スポーツ・レジャー用品 ボール類、ラケット類など化学素材がメインの9グループ
家具 木製デスク,リクライニングソファの2グループ
衣料品・生活消費財(繊維系) 天然・合成繊維、革製・合成皮革の衣料品、靴類、バッグ、タオル、カーテン・寝具などの6グループ

2.評価結果

国内小売事業の直接操業(店舗販売)を含む全バリューチェーンの依存・インパクト

ENCORE分析の結果、国内小売事業では商品バリューチェーンの上流にあたる「原材料採取・採掘」のプロセスにおいて依存・インパクトが特に大きく、一方で直接操業である店舗販売の依存・インパクトは相対的に小さいことを確認しました。
特にバリューチェーン上流に位置する下記のセクターによる依存・インパクトが大きくなっています。

  • 農林産業セクター:食品・飲料の原材料、衣料品・生活消費材に使用される天然繊維、紙製品や家具の原材料となる木材の調達
  • 鉱業及び採石業セクター:家電製品や金属製調理器具、時計やアクセサリーの原材料となる非鉄金属・貴金属の採掘、日用品雑貨や家電部品、スポーツ用のフィットネス・アウトドア用品、合成・化学繊維を用いた衣料品の原材料となる原油・天然ガスの採取
国内小売事業の直接操業(店舗販売)を含む全バリューチェーンの依存・インパクト
国内小売事業の直接操業(店舗販売)を含む全バリューチェーンの依存・インパクト
国内小売事業のVCに含まれる全セクターの依存・インパクト平均スコア
国内小売事業のVCに含まれる全セクターの依存・インバウンド平均スコア
店舗販売の依存・インパクト

店舗販売においては主に下記の依存・インパクトが存在しますが、国内小売事業全体の中では相対的に小さいことを確認しています。

店舗販売における自然への依存・インパクトが生じる詳細要因
生態系サービス/
インパクト要因カテゴリー
操業上のリスク要因
依存 調整・維持サービス 河川・流域の低地、沿岸部、山地・丘陵地の裾野などに立地する店舗は、流域における水量調節機能、暴風雨の影響を緩和する自然地形や沿岸生態系の機能、植生による斜面の土壌・底質の保持機能などの自然災害の被害を緩和する生態系サービスへの依存
インパクト 気候変動 店舗営業における、電力・空調・冷蔵冷凍設備の利用
汚染(大気環境) 店舗設備や非常用発電機の稼働に伴うGHG以外の大気汚染物質の排出(NOx、SOx、粒子状物質等)
資源使用(水) トイレ、空調(冷却・暖房)、清掃、植栽管理等における生活用水の利用
資源使用(生物資源)
汚染(廃棄物)
食品廃棄物(売れ残り、生鮮・総菜、賞味期限切れ)、包装材・プラスチック(レジ袋、容器、緩衝材)などの廃棄物の排出
店舗拠点周辺の自然状況の評価

直接操業に該当する店舗販売について、国内に展開する全666拠点(店舗)を評価対象としました。評価にあたってはIBAT※5を用い、「生物多様性の重要性」「生態系の十全性」「生態系の十全性の急激な低下」の3要件に基づき、各店舗立地周辺半径5km範囲の自然環境の状況を把握しました。

生物多様性の重要性・生態系の十全性/生態系の十全性の急激な低下

※5 IBAT:国連環境計画(UNEP)などが参画するIBATアライアンスが提供する生物多様性リスク分析ツール

※6 PA:IBATで特定されたPAの中に、「共同漁業権区域」「特別緑地保全区域」「近郊特別緑地保全区域」「緑化地域」が含まれているが、これらの保護区の保全目的及び制度の性格が店舗販売の自然関連課題の評価対象としては適合性が低いと判断し、分析対象から除外

※7 STAR:The Species Threat Abatement and Restoration。種の脅威軽減・回復活動が世界全体の絶滅リスク軽減に寄与する可能性を定量化するもの

上記の依存・インパクトの評価の結果、現状の店舗販売における自然資本への直接的な依存・インパクトは、相対的に限定的であると評価しています。一方で、店舗周辺における生物多様性の保全上重要と定義されている地域との関係性が重要であることを踏まえ、店舗からPAまたはKBAまでの距離を基準として、拠点のスクリーニングを行いました。その結果、店舗からPAまたはKBAまでの距離が0kmである30拠点を、追加的な確認を要する拠点(以下「優先拠点」)として特定しました。さらに、PA及びKBAの双方までの距離が0kmである4拠点(福岡県2拠点、愛知県1拠点、青森県1拠点)を、管理上特に留意すべき拠点(以下「重要拠点」)として特定しました。
重要拠点について、PA及びKBAの特性、ならびに周辺地域に生息する主な生物種等に関する詳細なデスクトップ調査を実施し、その結果、現行の店舗操業内容に起因する自然・生物多様性への重大なインパクトは確認されておらず、重要拠点の立地に関連する自然関連リスクは現時点では相対的に大きくないことを確認しました。
今後は、店舗販売における自然資本への依存・インパクトが相対的に小さいとの評価結果を前提としつつ、新規店舗の設立時や、優先拠点及び重要拠点において操業内容の変更等が生じる場合には、当該拠点周辺の自然環境の状況に十分配慮し、必要な情報収集及び状況把握に継続的に行っていきます。

商品バリューチェーンの依存・インパクト

商品のバリューチェーンについては、7つの商品カテゴリーを対象として、商品バリューチェーンにおける自然への依存・インパクトのENCOREの評価結果を点数化し、原材料調達から製造、流通、販売、廃棄・リサイクルに至る各工程のスコアを算出したうえで、それらを平均化し、商品カテゴリーごとに積み上げて評価しました。その結果、7つの商品カテゴリーのうち、「食品・飲料」のバリューチェーンのVC全体平均スコアが最も高く、次いで「衣料・生活消費財(繊維系)」となりました。
また、7つの商品カテゴリーすべてにおいて、バリューチェーンの中でも「原材料採取・採掘」の工程が最も高い平均スコアを示していることが確認されたため、原材料採取・採掘の工程に着目し、自然への依存・インパクトが生じる要因を詳細に分析しました。
この結果から、商品カテゴリーごとの特性を踏まえつつ、原材料調達段階における自然関連リスク及び機会を抽出し、今後の対応方針の検討における重要な基礎情報として活用していきます。

各商品カテゴリーの平均依存・インパクトスコアの合計
原材料採取・採掘の工程における自然への依存・インパクトが生じる詳細要因
生態系サービス/
インパクト要因カテゴリー
操業上のリスク要因 食品・
飲料
日用雑貨・
医薬品
携行品・
嗜好品
家電製品・
金属類調理器具
スポーツ・
レジャー用品
家具 衣料品・
生活消費財(繊維系)
依存 供給サービス 原材料として農林水産物の使用
調整・
維持サービス
土壌、水、降雨量、その他の気候条件が適した環境下
における農林水産物の生産
採石・石炭採掘工程(冷却・化学処理等)において求められる一定基準の水質の水の使用
インパクト 気候変動 畜産物の生産における反芻家畜(特に牛・羊)の消化過程及び排泄物からのGHG(特にメタン)排出
鉱物の採掘及び採石工程におけるエネルギー使用に起因するGHG排出
陸・淡水・海洋利用の変化 家畜飼育、植林、作物栽培(特に牛、コーヒー、大豆、ゴム、カカオなどのSBTNのHICL該当品)、養殖施設の設置に伴う土地転換
鉱物・非鉄金属採掘のための排水設備・沈殿池・処理施設の設置、及び採石における淡水域の利用
鉱物・非鉄金属掘削・吸引・剥離、採石による海底表層の除去
汚染
(大気環境)
家畜飼育における廃棄物(排泄物からのアンモニアや悪臭物質)の排出、作物栽培(特に穀物・豆類・油糧作物)における肥料・農薬の大量散布
鉱物、非鉄金属、石、砂の採掘・採取・掘削・破砕・選鉱のプロセスにおける、粉じん、燃料燃焼由来の排ガス(NOx、SOx)、揮発性有機化合物などの放出
汚染
(廃棄物)
家畜飼育、作物栽培(特に多年生作物、穀物・豆類・油糧作物)、養殖において発生する排泄物、残渣、資材廃棄物(プラスチック資材)の発生
非鉄金属鉱業における採掘・選鉱工程に伴う鉱物残渣、副生成物(尾鉱やスラグ等)の発生
汚染
(土壌・水)
家畜飼育、作物栽培、養殖における飼料や肥料の利用
作物栽培における農薬の使用、及び家畜・養殖における疾病予防・健康管理を目的とした抗生物質等の化学物質の利用
鉱業・採石業における、化学物質を含む排水および鉱滓(ずり)・残渣の発生
汚染
(生活妨害)
鉱業・採石業の操業過程における、重機稼働・夜間照明利用に起因する騒音・振動・光害の発生
資源使用
(水)
家畜飼育における飲水・衛生管理用水の使用、養殖における水質管理、作物栽培(特に穀物・豆類・油糧作物)における灌漑用水の利用
資源使用
(生物資源)
養殖用飼料及び稚魚確保に伴う野生種の採取
資源使用
(その他非生物資源)
鉱業・採石業の操業における、鉱物資源、石・砂・粘土等の非生物資源の採取
侵略的外来種の侵入 飼料・敷料への外来植物種子の混入、家畜移動時の意図しない種子運搬、作物栽培における不適切な廃棄物管理、農機具・作業員衣服への外来種付着、養殖種の脱走等を通じた侵略的外来種の拡散

この結果から、商品バリューチェーンの上流における原材料調達は、当社グループの自然関連リスク・機会と特に密接に関係する重要な領域であり、今後の対応の方向性を検討する上で極めて重要であることを認識しました。

リスク・機会

店舗販売及び商品バリューチェーンの依存・インパクト評価結果を基に、当社グループの国内小売事業におけるリスク及び機会を抽出しました。併せて、特定されたリスクへの対応策について整理・検討し、当社グループのビジネスに及ぼすネガティブまたはポジティブな影響を整理しました。

1.評価の結果

リスクの結果
国内小売事業 リスク表(商品・店舗)
機会の結果
国内小売事業 機会表

2.全社戦略

当社グループは、TNFDに基づく依存・インパクト評価及び自然関連リスク・機会の分析結果を踏まえ、自然関連課題への対応を、当社の中長期的な事業運営を検討する上での重要な要素の1つとして位置づけています。具体的には、店舗運営においては、エネルギー使用や資源循環に関連する環境負荷の低減を継続的に推進するとともに、商品バリューチェーン全体、とりわけ今後の事業拡大が見込まれる食品・飲料分野(特にPB/OEM商品)の上流における原材料調達において、自然資本への依存及びインパクトに起因するリスクを認識し、関連する課題の把握を進める必要があると考えています。
これらの検討を進めるにあたっては、原材料の生産段階や調達地域ごとの特性などを踏まえた評価の重要性を認識しており、今後、分析内容の精緻化や対象範囲の拡充を段階的に進める必要があると考えています。
こうした取り組みを通じて、自然関連課題の把握及び管理の高度化を図るとともに、自然への配慮を事業運営や意思決定にどのように反映していくかについて、引き続き検討を行っていきます。

 

リスクとインパクトの管理

自然関連課題の特定、評価、優先付けのプロセス

評価対象の決定

本開示においては、当社グループの多岐にわたる事業の中から主要事業である国内小売事業を評価対象事業に選定しました。国内小売事業のバリューチェーンは原材料の調達から物流、店舗運営、商品・サービスの提供、廃棄・リサイクルに至るまで広範に及び、これらの各段階における自然との接点を適切に把握するため、下記の2つを評価対象範囲に決定しました。

  • 「店舗販売」・・・国内の全666店舗における直接操業内容と周辺の自然状態
  • 「商品バリューチェーン」・・・国内店舗で販売する主要商品のバリューチェーン
依存・インパクト、リスク・機会の評価プロセス

上記で決定した評価対象範囲に対して、自然への依存・インパクト、リスク・機会を特定するため、TNFDで推奨されるLEAPアプローチを採用して評価を行いました。

各評価範囲にたいするLEAPアプローチ実施の流れ
●Locate

IBATを用いて国内666店舗の周辺半径5kmの範囲に対し、「生物多様性の重要性」「生態系の十全性」「生態系の十全性の急激な低下」の3要件から自然状態を評価しました。店舗販売の操業では水の大量取水や河川等への直接排水も行わないことから、「物理的水リスク」は要件から除外しました。具体的にはProtected Area(PA)、Key Biodiversity Area (KBA)、Species Threat Abatement and Restoration(STAR)を評価観点とし分析を行い、特に店舗からPAまたはKBAまでの距離が0kmの拠点を優先的に確認すべき拠点(以下「優先拠点」)、さらにPA・KBA双方までの距離が0kmである拠点を管理上特に重要な拠点(以下「重要拠点」)として位置付けました(※)。
重要拠点については、IBATによる一次分析に加え、環境省が提供する生物多様性分析支援ツールEnvironmental Impact Assessment Database System (EADAS)※8や、関係自治体が公表する自然環境・生物多様性に関する情報を活用し、PA・KBAの特性、ならびに周辺地域に生息する主な生物種等に関する詳細調査を実施しました。

※8 EADAS: Environmental Impact Assessment Database System。環境省が提供する環境アセスメント支援ツール。自然公園、鳥獣保護区、植生、重要な生物種の生息情報等日本全国の自然環境に関する情報を一元的に閲覧できるデータベース。

※IBATで特定されたPAの中に、「共同漁業権区域」「特別緑地保全区域」「近郊特別緑地保全区域」「緑化地域」が含まれているが、これらの保護区の保全目的及び制度の性格が店舗販売の自然関連課題の評価対象としては適合性が低いと判断し、分析対象から除外。

●Evaluate

店舗販売については、対応するセクターを「非専門店小売業」に特定しENCORE評価を実施しました。
商品バリューチェーンについては、主要商品を原材料の特性や製造プロセスに応じて7カテゴリー・34グループに分類し、そのカテゴリーごとに原材料調達から製造、流通、販売、廃棄に至るまでのバリューチェーン全体のプロセスを整理したうえで、各プロセスに対応するセクターを特定し、ENCORE評価を実施しました。
これらのENCORE評価結果に基づき、店舗販売及び商品バリューチェーン全体における依存・インパクトを分析しました。

●Assess

ENCORE評価の結果を基にリスク評価が必要と考えられる操業上のリスク要因を特定し、TNFDのカテゴリーに沿ってリスク・機会を抽出・整理しました。
店舗販売については、ENCORE評価でMedium以上と判断された依存・インパクト項目に加え、当社グループの経営上の重要性及びステークホルダーの関心を考慮し、リスク・機会を特定しました。
商品バリューチェーンについては、依存・インパクトスコアが最も大きくなった原材料採取・採掘プロセスに着目し、そのプロセスにおいてENCORE評価がHigh以上と判断された依存・インパクト項目からリスク・機会を特定しました。
特定されたリスク・機会によるビジネスへのネガティブ・ポジティブインパクトを整理し、リスク軽減・機会の獲得に向けた対応策の検討を行いました。

●Prepare

特定されたリスク・機会に対し、管理及びモニタリングに関連する指標と目標の検討を行い、開示に向けた準備を行いました。

自然関連課題の管理プロセス、組織体制のリスク管理への統合

当社グループでは、コンプライアンス推進本部が、主に店舗・拠点で発生するリスク事案の管理を行っています。リスク事案に関わる情報収集、リスク対応及び対策を関連部署と連携して決定し、店舗・拠点はその指示に基づき対策を実行しています。

気候変動関連のリスクに対しては、サステナビリティ委員会が特定・評価、対応策の検討・推進、マネジメントを実施し、コンプライアンス推進本部へ情報連携しています。

気候変動以外の自然関連リスクにおいても、同様に全社的なリスク管理の枠組みに統合することを検討していきます。

 

測定指標とターゲット

当社グループは、自然関連課題に関する指標を下記の通り設定しています。

グローバル中核開示指標と関連する目標
自然の変化の要因(指標カテゴリー) 測定指標番号 指標 当社グループの開示内容 目標 GBFターゲット番号 リスク・機会との関連
気候変動 - GHG排出量 Scope1,2,3排出量(t-CO₂)
(対象:国内主要法人)
2024年度実績:6,584,624
2025年度実績:6,978,516

※合計に使用するScope2排出量はマーケット基準にて算定

  • 2030年までに店舗からのCO₂排出量を2013年度比で50%削減
  • 2050年までに店舗由来のCO₂排出量を総量ゼロ
7
汚染/汚染除去 C2.1 廃水排出 排水量(千㎥)(対象:ユニー(株)、UDリテール(株)
2024年度実績:3,477
2025年度実績:3,648
目標は設定していません 7、11
C2.2 廃棄物の発生と処理 廃棄物排出量(t)(対象:国内リテール法人)
2024年度実績:152,438
2025年度実績:151,781
目標は設定していません
リサイクル量(t)(対象:国内リテール法人)
2024年度実績:92,975
2025年度実績:96,026
C2.3 プラスチック汚染 顧客サービスで使用するプラスチックの使用量(対象:国内リテール法人)

※レジ袋、店舗演出POPのラミネートフィルム、食品ポリ袋、カトラリー類(スプーン・ストロー)、傘袋

2024年度実績:2,653
2025年度実績:2,586
2030年までに顧客サービスで使用するプラスチックの使用量を70%削減(2019年度比)
リスク・機会 C7.2 自然関連のマイナスのインパクトにより当該年度に発生した多額の罰金、科料、訴訟の内容と金額。 環境法令違反罰金額(円)(対象:国内主要法人)
2024年度実績:0
2025年度実績:0
目標は設定していません -

セクター中核開示指標及びその他の追加指標
種類 測定指標番号 指標 当社グループの開示内容 目標 リスク・機会との関連
飲料セクター B.C3.1 水使用量 水使用量(千㎥)
(対象:ユニー、UDR)
2024年度実績:2,828
2025年度実績:2,827
目標は設定していません
食料・農業セクター FA.C23.0 再利用された食品廃棄物 食品廃棄物量(t)
(対象:国内リテール法人)
2024年度実績:16,086
2025年度実績:15,397
目標は設定していません
食品リサイクル量(t)
(対象:国内リテール法人)
2024年度実績:9,503
2025年度実績:8,867