TCFDに基づいた気候変動への対応

気候変動への取り組みは、PPIHグループの持続的な発展、中長期的な企業価値向上のための重要課題と認識しています。その取り組みを加速し確実なものとするため、2022年2月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(以下、TCFD)」に賛同し、TCFDの枠組みに基づいたシナリオ分析と開示を行いました。今後も継続的に取り組みを進め、開示を拡大していきます。
ガバナンス
気候変動への対応は、サステナビリティ担当役員である代表取締役 兼 専務執行役員 CSOのもと、サステナビリティ委員会が対応策を企画・立案し、グループ会社の事業活動に反映しています。
サステナビリティ委員会は、気候変動を含むサステナビリティへの取り組みの進捗や目標達成状況について、年1回以上、取締役会に報告を行っています。気候変動に関する方針・戦略・重要な取り組みは取締役会で議論され、承認を得て、サステナビリティ施策を実行しています。
サステナビリティ委員会は、リスクマネジメント管掌の執行役員を委員長におき、月に1回開催しています。気候変動を含むサステナビリティ諸課題への対応について下部組織の分科会より報告を受け、目標設定・進捗管理・モニタリングを行っています。また、サステナビリティ経営の専門知識を有する社外委員と定期会合を行い、専門的観点をもって取り組むことができる体制を構築しています。

気候変動に関わるガバナンス体制と役割、報告・審議実績
組織 | メンバー | 役割 | 開催数 |
25年6月期 主な報告・審議事項 |
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取締役会 |
取締役 監査役 |
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年2回 |
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サステナビリティ委員会 |
【委員長】 執行役員 リスクマネジメント管掌 【委員】 関連部署責任者(環境対策、設計、施設管理、災害対策、危機管理、ストアコンプライアンス、商品調達部門、品質管理、公正取引管理、法務) 【社外委員】 冨田秀実氏(一般社団法人サステナビリティ経営研究所 代表理事) |
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年12回 (月1回) |
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戦略:前提とするシナリオ
【1.5℃シナリオと4℃シナリオ】
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書(AR6)によると、2100年までの世界平均気温の変化は、CO₂排出量の増減によって5つのシナリオに分けて示されています。
このほかにも様々な機関・団体などから複数のシナリオが公表されていますが、①起こりうる複数の未来すべてに対策を練ることは戦略的とはいえないこと、②両端の対策を講じておくとその間の結果に収まった時にも対処しやすいことから、1.5℃と4℃の気候シナリオに基づいたシナリオ分析を実施しました。
1.5℃シナリオ | 4℃シナリオ | |
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想定する社会 | 今世紀末までの世界の平均気温上昇を1.5℃に抑えるため、脱炭素社会への移行に伴う社会変化が事業に影響を及ぼす可能性が高い社会 |
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参照シナリオ | IEA「Word Energy Outlook 2024」Net Zero Emissions by 2050 Scenario |
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戦略:リスク・機会の特定
PPIHグループは、国内外の700以上の店舗が地域のニーズに合わせた多種多様な商品を調達・販売しています。
なかでも国内の売上構成比が8割を超えており、気候変動による影響度も国内が相対的に高くなると考えています。
このような理由から分析対象範囲を「国内店舗運営」及び「商品調達」とし、1.5℃シナリオと4℃シナリオにおいて、気候変動による社会環境変化から想定されるリスクと機会を特定し、短期・中期・長期の時間軸※1でバリューチェーンプロセスにおける当社への財務影響度の評価※2を行いました。(シナリオ分析実施時期:2025年6月)
今後、どちらのシナリオに向かっても事業継続を担保し、事業機会の拡大につなげていけるよう下記の対応策を検討・実施し、社会環境変化に柔軟・迅速に対応していきます。
- ※1 時間軸は、短期:~1年、中期:~2030年、長期:~2050年と設定。
- ※2 バリューチェーンプロセスにおける財務影響度を「影響を受ける可能性×影響の大きさ」に基づき、定性/定量的に評価。(定量評価が困難なリスク・機会は定性評価を行い、時間軸ごとに影響を受ける可能性を評価) 定量評価を行ったリスク・機会については、以下の設定に基づき、「高」「中」「低」の3段階で影響度を評価しました。
財務影響度設定...「高」:連結営業利益の3%以上、「中」:3%未満~1%、「低」:同1%未満
1.5°C シナリオ

4°C シナリオ

リスク管理
PPIHグループでは、リスクマネジメント本部が、主に店舗・拠点で発生するリスク事案の管理を行っています。リスク事案に関わる情報収集、リスク対応及び対策を関連部署と連携して決定し、店舗・拠点はその指示に基づき対策を実行しています。
気候変動関連のリスク・機会については、サステナビリティ委員会が特定・評価、対応策の検討・推進、マネジメントを実施し、リスクマネジメント本部へ情報連携しています。
気候変動関連を含むリスクへの対応状況のモニタリングについては、リスクマネジメント本部のストアコンプライアンス推進部が定期的に臨店チェック等を実施し、結果を関連部署と連携して改善を徹底しています。また、重大なリスクについては必要に応じて取締役会に報告しています。
気候変動に関わるリスクの特定、評価プロセスの詳細
サステナビリティ委員会において、1.5℃シナリオ/4.0℃シナリオごとに、バリューチェーンプロセスにおける影響度を「影響を受ける可能性×影響の大きさ」に基づき3段階(高・中・低)で評価し、対応策を企画・検討し、実行しています。(詳細は「戦略」参照)
今後、リスクマネジメント本部とサステナビリティ委員会の連携を強化し、気候関連リスクを全社的な経営リスクとして認識・管理する体制を整備していきます。

指標と目標
気候変動への取り組みは、PPIHグループの持続的な発展、中長期的な企業価値向上のための重要課題と認識しており、TCFDの枠組みに基づいたシナリオ分析により特定されたCO₂排出に関わるリスクに対応するため、パリ協定に基づく日本のNDCを参照し脱炭素目標を設定しました。
グループ一丸となって目標が達成できるよう取り組み、進捗については定期的に開示を行っていきます。また、その他のリスクについても対策を検討し、定量的な目標の策定、目標達成に向けた取り組みについて随時開示を行い、気候変動への対応を推進していきます。
PPIHグループ 脱炭素目標
目標 (対象:国内スコープ1・2) |
進捗(2013年度比) | |||
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2022年 6月期 |
2023年 6月期 |
2024年 6月期 |
2025年 6月期 |
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2030年までに 店舗から排出するCO₂排出量を50%削減(2013年度比) |
16%削減 | 20%削減 | 26%削減 | 33%削減 |
2050年までに 店舗から排出するCO₂排出量を総量でゼロにする |
■目標実現に向けた主な取り組み
- ➀空調及び冷蔵・冷凍ケースの制御設備や照明の調光設備の導入、設定温度や点灯時間の適正化の徹底などにより、店舗運営のエネルギー使用の効率化、エネルギー使用量の削減
- ➁太陽光発電など再生可能エネルギーの創出
- ➂非化石証書取引を活用した再生可能エネルギーへの置き換え

太陽光パネル(MEGAドン・キホーテ甲府店)
今後、食品以外のカテゴリーや海外事業にもシナリオ分析の範囲を広げ、リスクと機会の特定を進めていきます。
また、お取引先さまとともに環境に配慮したサプライチェーンの構築を進め、Scope3における排出量削減の開示についても精度を上げていきます。
- ※Scope 3:
- 自社が購入した物品の製造時の温室効果ガス排出量や、消費者による自社製品使用時の温室効果ガス排出量など
■CO₂排出量・売上原単位の推移
2024年6月期にはCO₂排出量売上原単位が2013年度比で26%削減、2025年6月期には33%削減と、2030年目標に向け順調に推移しており、総量でも減少しています。
FY22/6期 | FY23/6期 | FY24/6期 | FY25/6期 | |
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CO₂排出量 Scope1 ※1 ※2 (t-CO₂) |
70,174 | 65,324 | 64,228 | 68,530 |
CO₂排出量 Scope2 ※1 ※3 (t-CO₂) |
452,694 | 447,181 | 446,025 | 433,236 |
合計 | 522,868 | 512,505 | 510,253 | 501,766 |
CO₂排出量売上原単位 (百万円当たり) |
0.336 | 0.319 | 0.296 | 0.269 |
- ※1 Scope1・2は、「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」・「地球温暖化対策の推進に関する法律」に基づき算出
- ※2 Scope1:環境省「算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧」の排出係数を用いて算出
- ※3 Scope2:環境省「電気事業者別排出係数(特定排出者の温室 効果ガス排出量算定用)」の排出係数を用いて算出
CO₂排出量推移
