価値創造ストーリー/ポートフォリオ経営

ポートフォリオ経営
−リスク分散型「変化対応業」で好業績を維持−

国内小売業態におけるポートフォリオ経営
Story1ユニーの構造改革
New GMSに向けて
ストーリーサマリー
  • 理想的な立地と高い人財ポテンシャルを有するユニーが苦戦していたのは「商いの原点」と「適切な人事制度と組織体制」が不足していたことが原因。
  • PPIHの個店経営の仕組みを用いて「権限委譲」が機能する組織体に改革していけば、GMSとして次のステージに進むことができる。
  • 個店経営には「本部の現場を信じる覚悟」が問われる。一朝一夕で身につかないこのノウハウはPPIHグループの価値。
Story2
コロナ禍におけるGMS事業・海外事業の活躍
ストーリーサマリー
  • コロナ禍の人流制限により国内ディスカウントの駅前店舗が苦戦。
  • これを郊外店舗、GMS事業、海外事業がカバー。
  • GMS事業はコロナ禍における外食の代替需要等を追い風に既存店はプラス基調で推移。
  • 海外事業は「ジャパンブランド・スペシャリティストア」が人気と認知を獲得。日本からの一次産品を直接輸出することで収益性を高めた。
ポートフォリオ経営を支える基盤

価値創造ストーリー/特集「New GMS戦略」

取締役 兼 専務執行役員 GMS事業統括責任者 関口憲司

当期(2021年6月期)はコロナ禍が続くという異常な環境下でしたが、ユニーは地域のお客さまに支えられ、また店長をはじめとするスタッフの踏ん張りで、PPIHグループの32期連続増収・営業増益達成の一翼を担い、事業ポートフォリオの主軸となるまでに成長することができました。

チェーンストア経営から個店経営へ転換

ユニーの代表取締役社長に就任し、直ちに構造改革に着手しました。具体的にはチェーンストア経営からの脱却と、個店経営の導入です。
私はPPIHグループ入りした長崎屋の経営に携わり、同社の改革を主導した経験があります。従来の長崎屋の店舗をMEGAドン・キホーテという新しい業態に一変させる、外からも目に見える形での改革でしたが、いまでもあの方法が最善の選択であったと考えています。
しかしユニーの場合、長崎屋とは状況が異なります。私は社長就任に先立ちユニーの店舗を視察し、各店舗が立地・人財とも高いポテンシャルを持ちながら地域のニーズを反映しきれていない現状に気づきました。ユニー低迷の原因が本社主導によるチェーンストア経営にあり、それをドン・キホーテ流の個店経営に転換すれば成長軌道に乗せることができると確信したのです。
多店舗を本社が集中的に管理するチェーンストア経営とは異なり、個店経営では、お客さまに最も近い存在である店舗スタッフが自由裁量権を持ち、当事者意識を持って店舗運営を行います。迅速な顧客ニーズへの対応やスタッフのモチベーションアップが可能となり、結果として店舗の活性化につながります。

現場の意識改革を図る人事評価制度の改定と組織改革

取締役 兼 専務執行役員 GMS事業統括責任者 関口憲司

着任後、最初に実行したのが、人事評価制度の抜本改定と本社の組織改革です。
人事評価制度については従来の相対評価を排し、「店長」「副店長」など各役職に求める仕事の定義を変更した上で、その役割が果たせたかどうかで評価する絶対評価を導入しました。例えば、店長はプレイングマネージャーであり、その仕事は命令に従わせるのではなく共感してもらうこと、スタッフとともに考える組織をつくることです。またアルバイトから正社員まで一律に、会社・店舗にどう貢献しているかという評価項目を加えました。この制度改定により過去の実績は白紙となり、全員ゼロからのスタートとなりました。抜擢も可能となり、28歳の若い店長も誕生しています。
本社の組織改革では、組織のフラット化と人財の配置転換による風通しの良い組織づくりをめざしました。チェーンストア経営の核となる本社・商品本部は年功序列の人事制度の下で人財が滞留し、ベテランの意見が通りやすい一方、店舗では、「すべて本社からの上意下達で現場が何を言っても仕方がない」という無力感が漂っていました。そこで、本社の商品本部・営業本部・営業企画本部をまとめて営業本部傘下とし、組織をフラット化するとともに人員を3分の1に圧縮しました。風通しが良くなったことで若手が積極的に意見を表明するようになり、ベテランは営業に出て現場の声を直接聞くことで顧客最優先主義の本質を実感するようになったと思います。

営業力・収益力の強化で地域一番店をめざす

取締役 兼 専務執行役員 GMS事業統括責任者 関口憲司

一連の改革により多くの権限が個店に委譲できる仕組みが整った後、店舗には仕入れ権限に加え、売価権限、陳列方法の権限、ポップの権限、売り切りの権限を与えることで、現場で粗利をコントロールできるようにしました。これまで経験のない業務をしなければならないスタッフにとって、当初の苦労は並大抵ではなかったと思いますが、粗利を自分たちで管理できるなら販管費を削減しようとする意欲も湧いてきます。個店が粗利管理を行うようになった結果、チラシにかかる販促費が私の着任当時から6割ほど低減しましたが、これも個店経営導入による効果の現れと考えています。当期中に組織、人事制度、商売の仕組み、営業企画、店づくりなどのインフラ整備はほぼ完成しました。今後は営業力・収益力の強化に注力していきます。
営業力強化の一環として、昨年末には優秀な店長に複数店舗を任せる統括店長制度を導入しました。統括店長は現在23名ですが、店長が複数店舗を管理することで店舗同士の交流も深まり、すでに仲間意識と同時に競争意識も生まれるなどの効果が出ています。
また、店舗リニューアルも、新規出店と同様にゼロベースで商圏の調査から行っています。既存のお客さまだけではなく、新しいお客さまに来店いただけるリニューアルを成功させるためには、商圏の世帯状況や競合店の存在など、あらゆる情報から店舗改装の絵図をロジカルに導き出すことが不可欠です。まずは店舗ごとに独自のアプローチで地域一番店をめざし、その過程でNewGMSという新業態の創出を図っていくつもりです。

現場を信じ、個店経営を貫く

国内のGMSとドラッグストアを合わせた市場は20兆円規模とされ、今後もシェア獲得をめざしさまざまなライバルが登場してくるでしょう。
しかし競合他社がPPIHと同様の個店経営を導入し、企業成長を実現することは難しいと考えています。個店経営では、現場が意識改革を求められるとともに、本部も現場を信じ切る覚悟を厳しく問われることになるからです。
経営者としての私の仕事は、常に現場を信じ、サポートを続けていくこと─そして、それこそPPIH流個店経営を貫き、成功に導く鍵だと考えています。