コーポレートガバナンス体制の強化

西谷順平 社外取締役(監査等委員)

急成長を可能としたPPIHならではの魅力・強みとは

着任して2期、4年が過ぎました。この間、売上目標1兆円を達成し2兆円も目前に迫るなど、PPIHグループが大きな進化を遂げてきたことを改めて実感しています。
社外取締役としての立場からPPIHの魅力・強みを語るとすれば、第一に企業哲学「源流」、第二に小売業の枠に収まらないビジネスモデル、そして最後に柔軟性ある人事システム─といったところになるでしょうか。
まず「源流」については、単なる企業原理・経営理念の明文化にとどまらず、実効性を伴う規範として組織を支えている点が外部から見ると大きな驚きであり、魅力的に映ります。また、PPIHは小売業に分類されるものの、実際には事業を固定化せず、人財をリソースとして市場(顧客)ニーズに応えることを事業展開の枢軸としていること、さらに、徹底した実力主義で、広く誰にでも挑戦と成功のチャンスを与えていることなどは日本企業として稀有な特徴であり、PPIHを急成長へと導いた重要な資産といえるでしょう。

ビジネスそのものが社会課題解決につながる取り組みを

企業の取締役会は、株主を通してステークホルダーから権限委譲されており、ステークホルダーの要請に応えることは当然の責務です。近年、ステークホルダーの間では利益の最大化に加え、環境・社会の持続可能性を犠牲にしない形での企業活動を求める機運が高まっており、これらの要請に応じて多くの企業がESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGs(持続可能な開発目標)の取り組みを加速させています。PPIHにおいてもサステナビリティ委員会の新設など推進体制の整備が進められてきました。今後はESGの各領域で実効性ある取り組みが展開され、進捗状況が報告されるものと期待しています。一方、これら各分野で改善を進めることも重要ですが、個人的には事業そのものが社会課題の解決につながる、より大きな枠組みによるPPICの展開に注目しています。
PPICがめざす国内一次産業の活性化、国内生産者・海外消費者とのwin-winの関係構築は、まさに課題解決そのものであり、PPIHならではのサステナブルなビジネスモデルとして世界にアピールすることができると確信しています。
今後、グループの持続的成長の実現に向けては、PPICで実践されているように社会価値と経済価値の両立を図っていくこと、また、ESGをビジネスチャンスに結び付けようとする意識を社内に定着させていくことが重要になります。経営陣には、例えばビジネスアイディア・コンテストの実施など、従業員一人ひとりが当事者意識を持ってESGの視点で業務に取り組むことができるよう、積極的な啓発活動・仕組みづくりを促したいと考えています。

社会から信頼される存在であり続けるために

私は財務会計が専門ですが、組織の制度設計、モラルハザードなどをモデル分析する研究者でもあり、こうした研究で培った知見を活かして組織や人財に生じる歪みについて指摘していくことが、社外取締役として重要な役割だと認識しています。
PPIHでは急成長に伴い短期間で組織規模が拡大し、事業内容も複雑化しています。経営陣には、重要なステークホルダーである従業員に向けて説明責任を果たして組織のベクトル統一を図り、グループをあるべき姿に導いてほしいと思います。
今後の持続的成長、企業価値向上に向け、PPIHグループは、売上・利益の拡大だけではなく、社会から愛され、信頼される存在であり続ける途をめざすべきだと思います。社会の要請に応えながら持続的な企業価値向上を実現できるよう、監督・監視をしてまいりますので、ステークホルダーの皆さまには、今後のPPIHの一層の成長に期待していただければと思います。

コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方

当社は、企業原理である「顧客最優先主義」を徹底し、コーポレート・ガバナンスとコンプライアンスの強化を図るとともに、積極的なディスクロージャーを行い、社会と共生する当社への理解を深めることが、企業価値増大のための重要な経営課題と位置づけています。高い倫理観に則った事業活動こそが、企業存続の前提条件であるとの理念に立ち、社内での早期対応体制を構築し、社外専門家の助言を仰ぎながら、企業統治体制とその運営の適法性を確保しています。

コーポレート・ガバナンス体制(2021年10月1日現在)

当社は、監査等委員会を設置し、監査等委員である取締役に取締役会における議決権を付与することで、取締役会の監査・監督機能を強化し、コーポレート・ガバナンスの一層の充実及び企業価値の向上を図ることを目的としています。

コーポレート・ガバナンス体制図

取締役会

当社は、取締役会を月1回以上開催し、企業価値向上に向けた当社の重要な経営戦略の策定などについて活発な議論を行っています。取締役会は15名で構成されており、株主の皆さまと同じ独立した視点と幅広い見識を取り入れるべく、独立社外取締役5名(うち4名は監査等委員)を選任しています。

取締役会から経営陣への委任範囲

当社は、監査等委員会設置会社への移行に伴い、取締役会の決議による重要な業務執行の決定の全部または一部を、取締役に委任しています。さらに当社は、激変する外部環境に柔軟かつ迅速に対応するため、現場に対して大胆な権限委譲を行っていますが、職務権限規程において、取締役をはじめとする経営陣及び経営幹部に委任される事項を、その重要性や金額などによって明確に定めるなど、事業運営に関するガバナンスの充実に努めています。

取締役の職務執行

取締役の適正な職務執行のため、社外取締役の継続選任で、監督機能を向上させるとともに、社外取締役を含む監査等委員会が、取締役(監査等委員である取締役を除く)と独立した立場から、公正で透明性の確保された監査を徹底しています。

取締役会の実効性評価

当社取締役会は、少なくとも1年に1回以上、第三者機関を利用して取締役会の実効性を評価しています。2021年6月期は、取締役会メンバーが経営理念を十分に踏まえた活発な議論をもとに適切かつ迅速な意思決定を行っています。また、内部管理体制のモニタリングをはじめ、厳格な監督機能を発揮することで、中長期的な企業価値向上に実効的な役割を果たしていることを確認することができたため、取締役会の実効性は確保されているものと評価しています。
一方で、指名・報酬に関する透明性のさらなる向上やESG対応等、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向けた体制の強化が求められる結果となりました。

評価プロセス

上記の評価結果を踏まえ、今後、課題解決に向けた取り組みを進め、取締役会の実効性の一層の強化に努めるとともに、ガバナンス体制の拡充を図っていきます。

役員報酬制度

取締役(監査等委員である取締役を除く)の報酬については、株主総会の決議により承認された報酬総額の範囲内で、経営成績、財務状況及び経済情勢を考慮しながら、取締役会から委任された代表取締役社長が、「指名・報酬委員会」に諮問・答申の上、基本報酬の額の評価配分を決定しています。
また、監査等委員である取締役の報酬等については、株主総会の決議により承認された報酬総額の範囲内で、監査等委員の協議により決定しています。
取締役(監査等委員である取締役を除く)の基本報酬は年額600百万円以内とし、基本報酬とは別枠の株式報酬型ストックオプションとしての報酬を年額400百万円以内、監査等委員である取締役の基本報酬は年額100百万円以内とそれぞれ株主総会で決議しています。

株式報酬型ストックオプション

当社は2014年9月から、役員退職慰労金制度を廃止するとともに、株価上昇によるメリットのみならず株価下落によるリスクまでも株主さまと共有し、取締役の中長期的な業績向上と企業価値向上に対する貢献意欲や士気を一層高めるため、取締役(監査等委員である取締役を除く)に対し、行使価格を1円とする株式報酬型ストックオプション制度を導入しています。

2021年6月期の役員報酬
監査等委員会

監査等委員会は、取締役5名(うち社外取締役4名)で構成されており、取締役の職務の執行状況等についての監査を行い、必要に応じて会計監査人と連携を行うなど有効に監査が行われるよう努めております。また、社外取締役の4名全員が独立役員として選任されているため、全社経営戦略の策定をはじめとする会社運営上の重要事項について、一般株主と利益相反の生じる恐れのない独立した立場で幅広い見識を取り入れることが可能であり、適切な経営判断が行われる体制になっています。

経営の透明性を高めるガバナンスの強化

社外取締役は経営に関する専門知識・経験等に基づき、社外の立場から経営に関する意見や指摘を行い、経営の健全性・透明性の向上等を期待して選任しています。社外取締役を選任するための独立性に関する基準や方針として明確に定めたものはありませんが、その選任に際しては、当社経営陣からの独立した立場で社外取締役としての職務を遂行できる十分な独立性が確保できることを前提に判断しています。

監査等委員である社外取締役(独立役員)の選任理由と取締役会/監査等委員会の出席状況
コンプライアンス委員会

法務・コンプライアンス管掌役員を中心として、不正防止の立案、検査及び調査の計画立案・検証、他社不正事例の共有と検証などを行っています。「コンプライアンス委員会」は、取締役、執行役員、社外取締役(監査等委員)、で構成、外部顧問弁護士の助言を受けられる体制を構築しております。
さらに、業務の適正を確保するための整備として、コンプライアンス及び内部統制に関する事項を統括し、高い倫理観に則った事業活動を確保し、ガバナンス体制とその運営の適法性の確保に努めています。また、グループ会社も含めた組織横断的なコンプライアンス上のリスク分析と評価を実施し、リスクの最適化に対応しています。

コンプライアンスの徹底

コンプライアンス強化の取り組み

当社はコンプライアンス強化の取り組みの一環として、法令や社内ルール違反について、従業員及び取引先などの通報窓口である「コンプライアンスホットライン」を設置しています。また、従業員とその家族の心とからだ、暮らしに関する悩みの解決を図るため、「なんでもあんしん相談窓口」を設置しています。 これらは社内規程に基づいて運用し、公正な取引と安全で安心な商品・サービスの提供につなげています。

内部通報制度
コンプライアンス研修の実施

PPIHグループは従業員一人ひとりが、高い志とモラルに裏付けられた無私で真正直な商売に徹するため、コンプライアンスの取り組みを強化しています。2020年11月に、グループの役員を対象に外部講師を招いて「インサイダー取引に関する実務」の研修を実施したほか、2021年はグループの全社員(正社員、契約社員)※を対象にした、eラーニングによるコンプライアンス研修を定期的に行い、組織全体で企業コンプライアンスの意識向上に努めています。

※(株)ユニーは正社員を対象に実施

コンプライアンス研修の実施

リスクマネジメントの強化

内部統制システム

PPIHグループは、業務の適正性・効率性、財務報告の信頼性を確保するため、内部統制システムを構築・運営・評価し、企業価値の向上に努めています。また、グループ全体でリスクを意識した業務管理体制を強化し、コンプライアンス経営を重視する企業グループとして、法令等に適合したさまざまな仕組みを構築しています。

事業等のリスク(要約版)

当社グループの事業その他に関する主なリスクは、次ページの通りです。なお、当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存です。記載された事項で、将来に関する事項は、2021年6月期有価証券報告書提出(2021年9月29日)現在入手可能な情報から得られた当社グループの経営判断や予測に基づくものです。

事業等のリスク(要約版)
リスクへの対応・取り組み
〈新型コロナウイルス感染症への対応〉

国内及び海外の新型コロナウイルス感染症拡大への迅速な対応を行うため、2020年3月6日に新型コロナウイルス緊急対策本部を開設し、情報の集約や社内発信、労働環境の整備やルールづくりなどを進めてきました。店舗では、飛沫対策のビニールシートや消毒液の設置、買い物カゴの除菌などの感染防止対策を徹底するとともに、お客さまにマスクの着用や、間隔を空けてレジにお並びいただくことへのご協力を呼びかけています。また、店舗事務所や休憩室においても、アクリル板やビニールシートを設置し、安心して業務を行える環境整備に努めています。

リスクへの対応・取り組み
〈情報セキュリティへの取り組み〉

PPIHは、店舗運営を支える基幹システムや、人事給与・会計などの情報システムの運用において、2013年にITサービスマネジメントの国際規格「ISO20000」を取得し、グループ内基幹業務の一層の安定を通して、ITサービスをはじめとする内部統制の充実を図っています。
また、当社グループのリアリットは、ITを活用したサービスを通じてステークホルダーの重要な情報を取り扱う企業として、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)に関する国際規格「ISO27001」を取得しています。同社では「情報セキュリティ10か条」を定め、年に4回以上、遵守状況のチェックを行っているほか、情報管理に関するWEBテストを毎年実施するなど、情報セキュリティルール遵守のための継続的な取り組みを行っています。

〈品質管理体制の構築〉

お客さまにお届けする商品の安全性を確保するために、品質管理体制の整備を進めています。品質管理部門では国際的に推奨される食品衛生管理手法である「HACCP(ハサップ)」の考え方を生鮮作業場の衛生管理にいち早く取り入れました。これは店内で製造販売する生鮮商品の安全性のさらなる向上につながっています。衛生管理計画書「HACCP統括表」と実行ツール「一般的衛生管理プログラム日報」を活用することにより、作業室入室前や作業室内で、食中毒や異物混入の発生を未然に防ぐ衛生管理を実践しています。
生鮮部門の従業員に対しては、HACCPマニュアルの配布やWEBテスト、講習会による知識習得教育を実施。2020年11月からは、店舗従業員の作業負担軽減・帳票記録の精度向上・本部支援業務の効率化を目的に、自社開発の「記録帳票保管のクラウド管理システム」を稼働し、iPadによる管理体制を整えています。

〈自然災害リスクへの対応〉

店舗の設備の増強

大雨や台風などによる水害発生時に、過去に浸水被害をうけた地域の店舗に止水板の設置や排水設備を増強し、被害の最小化を図っています。

店舗の設備の増強

災害対策本部の設置訓練をスタート

甚大な被害をもたらす地震や台風などの自然災害や大規模な感染症発生時に、災害対応力の向上を図ることを目的とした災害対策本部の設置訓練を実施しています。

災害対策本部の設置訓練をスタート

役員一覧