トップメッセージ

代表取締役社長CEO吉田直樹

厳しい環境を乗り越え、32期連続増収・営業増益を達成

ステークホルダー各位におかれましては、日頃より大変お世話になっております。会社を代表して、まずは御礼申し上げます。
さて新型コロナ感染禍が2年目に入る中、わが国でもワクチン接種が進み、国民生活も、漸く元の生活に少しずつ近づいていくような感覚を覚えられる方も少なくないのではないかと拝察いたします。この間、当社および当社従業員は、医療従事者、福祉関係者、保健所の職員の皆さま、各都道府県の職員の皆さまはじめ、たくさんの方の献身的な働きに助けられてまいりました。誠にありがとうございます。皆さまのお支えなしに業務を続けることはできませんでした。また、こういう場ではございますが、現場を懸命に支えてくれた当社の従業員にも心から感謝を伝え、労いたいと思います。
一方、外部環境も大きく変わり、消費の多様化、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)促進と、きわめて変化の激しい時代に突入したことを実感しております。我々PPIHグループはこれらの社会課題に直面する中、流通業を通じて敏感かつ的確に対応していかなくてはなりません。
さて、お陰さまで当社は、2021年6月期連結決算の売上高は1兆7,086億円(前年同期比1.6%増)、営業利益813億円(同7.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は539億円(同7.9%増)と32期連続増収営業増益を達成することができました。これもひとえに株主・投資家さまをはじめとするステークホルダーの皆さまのお力添えがあったからこそと、心から感謝申し上げますとともに、改めて皆さまのご期待に、より一層のお応えをするべく、気が引き締まる思いでございます。

「Passion2030」を見据えて、
国内・海外のポートフォリオ経営の進化を推進

当社は、中長期経営計画である「Passion2030」を発表して、2022年2月に、丸2年が経過いたします。そこで、Passion2030の中間地点である2025年を見据えた3ヵ年計画を、来年の本決算までに発表する予定です。毎期ごとに数字を追いながらも、中期的な目標を設定し、時代の変化に適確に対応していくという両輪戦略を実践していくことが、今期課せられた課題と捉えています。
今期42期における国内事業の取り組みに関してですが、まずは消費行動の明確な変化からも、これまで以上に小売店に対しての期待が大きくなり、当社にも今までとは違った期待をお客さまから求められております。そうしたことを前提にDS事業では、第2期を迎えたミリオンスター支社長※1を中心に、商圏ごとに潜在的なニーズを捉えて応え続けるとともに、PB商品の開発と導入強化等による差別化を図り、新しい時代においてもお客さまに支持され得る店舗作りを推進してまいります。
顧客の変化に対応し、その結果、インバウンド需要が消滅したドン・キホーテの売上・粗利改善改革がなされるための「NEXTドンキ創造プロジェクト」や、営業幹部全員が、従来のDS業態の成功体験を否定し、新たな業態創造を果敢に実行すべく、さまざまな仮説を出し合っております。その仮説は、例えば、「お菓子ドンキ」「お酒ドンキ」で実展開済みであり、また、精肉に特化した売り場の新しい業態「肉ドンキ」など、実行段階に来ているものもあります。
これらの新施策が軌道に乗れば、お客さまに喜んでいただき、インバウンドの売上がなくとも十分戦える事が証明できるでしょう。このような果敢な挑戦を、今後もどんどん進めていきます。そのためにも、さまざま生産性向上施策を実行し、2022年6月期には年300万時間の創出をめざし、新しい施策に取り組むことができる環境を整えます。
ワクチン接種が全世界に行き渡りコロナが落ち着けば、インバウンド需要も戻って来ることが予想されますし、その瞬間の機会を逃さないよう準備には万全を期しています。(ただし、当社では、本年度、インバウンド関連の売り上げをゼロと予算組みをしております。)
一方、GMS事業については、個店のプライシング強化と専門性を高めた売り場パッケージ開発での成功をもとに、「NewGMSへのリニューアル」を加速します。またUDリテールへの業態転換は、アピタにドン・キホーテがテナントとして展開する「テナントイン型」を中心として進めます。
次に、海外事業ですが、まずアジア事業に関しては、「ジャパンブランド・スペシャリティストア」としての抜群の人気と認知度を活かし、今期は12店舗程度の新規出店拡大を進めます。また、北米事業に関しては、既存店の改装とデリカ類の質の強化を鋭意図ってまいります。また、今後の海外事業の要となるPPIC(ピック)は会員獲得強化と取扱品目拡充による直貿金額の拡大を図ります。

「デジタル・データ戦略」の本格始動

デジタル・データ戦略に関しては、国内外において、消費者は、DX指向に急速に変化しています。2019年にマシュマロ構想をスタートし、社内のデジタル部門の組織体制構築とデジタル推進を行ってきました。そしてこの大きな消費行動の変化にさらに対応すべく、今期42期を機に新たにPPIHグループ全体のデジタル戦略を担うCXO※2職を設け、プロジェクトベースの「マシュマロ」からPPIH全体で取り組む実践ベースの「カイバラボ」※3と商号を変え、デジタル施策の本格化に向けて始動します。当社国内のアプリmajicaの会員数も800万人を超え、来年春の新しいmajicaアプリのローンチによって、当社のDX化は、お客さまにも目に見える形で加速化してまいります。また、金融の取り組みも同時並行して行っており、決済においても、デジタル化に対応した挑戦を行ってまいります。

サステナブルな社会が求める価値観に共感し、
誰もが生き生きと活躍できる企業の実現へ

ESGの取り組みについては、従来から活動していた「コンプライアンス委員会」、前期に設立した「ダイバーシティ・マネジメント委員会」「指名・報酬委員会」に加え、今期より環境やサプライチェーン・マネジメント活動を強化する「サステナビリティ委員会」の4委員会を中心にESGの取り組みを鋭意強化していきます。
サステナビリティ(持続可能性)、SDGs、ESGは、企業の持続的成長の必要条件となり、さらに周りに意識を向けてみると、若者を中心とするサステナブルな社会を求める価値観が、近年急速に増しているのを肌で実感しております。
廃棄物を減らし、再利用し、リサイクルという循環型社会(3R)があげられます。特に消費者である多くの若い人たちがはっきりその意思を示しています。そうした顧客の要請に応えるためにも、我々自身もそれに真剣に向き合っていかなければならないと考えています。
前述のとおり、当社は十分に顧客の変化に対して敏感に対応して行かなければなりません。そのためにも従業員の多様性を追求し、顧客親和性にあふれた売り場づくりをしてまいります。
さらにESGという枠組みの中では、とりわけ女性が生き生きと活躍できる企業になることを重要視しています。女性の視点・発想を経営にも取り込み、新しいニーズを見逃さないようにしなければなりません。

企業理念に沿った行動を愚直に行い、顧客最優先主義を貫く

当社は、今のような社会・経済・環境状勢だからこそ、当社の企業理念集「源流」に謳われている「果敢な挑戦」「現実を直視した迅速な撤退」「変化対応」「多様性を認めよ」等を愚直に行使し、顧客最優先主義を実践してまいる所存です。
今後とも一層のご支援、ご鞭撻を賜りますよう、切にお願い申し上げます。

※1 ドン・キホーテ、長崎屋及びUDリテールという法人の垣根を越えて、100万人商圏につき1名の支社長が営業を統括

※2 CXOの“X”はアナリティクス、デジタル、データ、マーケティング、さらにそれぞれの分野を融合し顧客体験全体を創出する意味での“X”=エクスペリエンスといった横断的視座を持って課題解決に挑んでもらうことへの期待が込められている

※3 「カイバラボ」とは、PPIHグループでは「売り場」のことをお客さまが商品を買う場という意味から「買い場」と呼んでおり、その「カイバ」の実験・研究を行う場「ラボ」(研究所<英:laboratory>)のワードを合わせた造語。またPPIHグループの「海馬(カイバ);頭脳の中枢」と位置づけている