TOP MESSAGE

代表取締役社長CEO 吉田 直樹

グループの結束力で困難な時期を乗り越えた

はじめに、新型コロナウイルス感染症に罹患された方々、及びそのご家族の皆さまに謹んでお見舞い申し上げます。
当社では今後も、お客さまの安全を守るため、店舗並びにオフィスの徹底管理をするのはもちろんのこと、今回のコロナ禍により、困難な状況にある従業員にも寄り添う施策を推し進めてまいる所存です。
さて、前期2020年6月期(第40期)において、当社の連結売上高は1兆6,819億円(前年同期比126.6%)、営業利益は760億円(同120.4%)と、ドン・キホーテ1号店出店以来、31期連続となる増収営業増益を達成することができました。その要因は、困難な状況下においても「権限委譲」による「変化対応力」を遺憾なく発揮してくれた、当社従業員一人ひとりの努力の総和であると、私は認識しております。
前期を少し振り返らせてください。2019年9月は、消費税増税前月にもかかわらず、盛り上がりを欠いた「肩すかし」の駆け込み商戦となりました。さらに翌10月の増税実施の直撃により、当社の既存店は年末に向け、前年割れが目立つようになります。
そして年が明け、改善状況が見られはじめた折りも折り、新型コロナウイルス感染症という大激震に見舞われたわけです。
この危機的な状況を乗り越えるべく、当社内では2020年3月2日の第1回グループ決起会を皮切りに、決起会を重ねました。そこでは、未曽有のピンチを逆にチャンスに転化させる、当社らしい方針や戦略が各方面から提案され、次々と実行に移されたのです。その結果として、グループの結束がさらに強化され、先に触れた31期連続の増収増益を達成できたのではないかと、私は改めて分析しております。

コロナ禍で生まれた真の一体感

いずれにせよ、世界的コロナ危機という、百年に一度とも言われる未曽有の異常事態において、当社の強みである変化対応力と顧客最優先主義の徹底ぶりが発揮されたのは間違いありません。
それを象徴するのが、当社グループの多くの店舗の店頭に、自発的に置かれた「ホワイトボード」です。
同ボードの表側には、マスクや消毒液などの「緊急必需」商品の在庫の場所と数量が明示され、さらにボードの裏側には、お客さまが自発的に書いてくださった感謝の声や応援メッセージが、所狭しとびっしり表記されているではありませんか。これがSNSで拡散され、結果として強力な集客につながりました。
要はホワイトボードへの手書きという、アナログの極致のような手段が、結果として店を舞台にした、従業員とお客さまの「交歓」につながったのです。まさにこれは、当社の強みが見事に顕在化した出来事だったのではないでしょうか。
一方、ユニーに関しては、少し違う文脈で振り返る必要がありそうです。2019年10月、ユニーの本格的なPMI(統合プロセス)がスタートいたしましたが、エモーショナルな面も含めて、ドン・キホーテとユニーとの間に、真の一体感をもたらせてくれたのは、意外にもコロナ禍という外的変化だったかもしれません。
少なくともコロナ禍で、商業環境が危機的状況に陥る中、郊外生活商圏に強いユニーが踏ん張って、業績をしっかりと下支えしてくれました。
もちろんドン・キホーテも、インバウンドや都心商業ニーズが蒸発する中、郊外ロードサイド店を主体に「変化対応力」を存分に発揮し、その勢いを後押ししました。
すなわち、結果としてコロナ禍は、お互いが切磋琢磨し、リスペクトし合ういい機会になったのではないでしょうか。

2021年6月期に解決すべき課題と対応

次は、そうした前期の振り返りを通して見えてきた課題点と、それらへの対応に関して触れたいと思います。
まず第一に、既存(リアル)店舗以外の、ECに代表されるようなチャネルを確保しておけば、コロナ禍においての業績は、さらに上振れたに違いないということです。これに関しては、マシュマロプロジェクトにて鋭意検討中でございます。
第二に、当社の強さでもあり、同時に弱さとも言える“属人性”が、マスクなどの商品確保や在庫管理面などでも、今回は特に目立ったことです。
要は、こうした異常時における対応を、属人性に頼ることなくきちんとシステム化しておけば、従業員への負荷がかなり軽減されたのではないかと推測され、今期以降、早急に解決すべき重要課題として取り組んでいかねばなりません。
第三に、プライシング戦略をもっと前倒しで進めておくべきであったということです。現在、システム構築は5合目くらいまで到達し、今期中には全店で稼働させる予定です。今後も、実証実験を繰り返すことで、価格の最適化及び在庫最適化を実現してまいります。
第四に、今期の最重要取り組み課題であるスポット、PBを含む商品力の強化です。
2020年9月1日から当社は、102支社体制に移行しました。ドン・キホーテ、長崎屋、UDリテールという法人の垣根を越えて、100万人商圏に1名の支社長が担当となる制度です。102人の支社長たちに完全なる「権限委譲」がなされることで、当社の営業・販売力は、格段にパワーアップします。
そして次は、そうした店舗軸だけではなく、商品軸も確実にブラッシュアップしていかねばなりません。
第五に、昨対主義からの脱却です。昨対主義というのは、過去の踏襲であり、PPIHグループがめざすべき「創造的破壊」とは、ある意味で対極にある概念です。今期以降は、従来の昨対主義から脱した新しい増収増益路線を確立いたします。
最後に、ESG経営の強化です。著しく変化していく社会と事業環境において、当社が持続的な成長と中・長期的な企業価値の向上を図るためには、ESG経営を進めるプラットフォームを確立する必要があります。
そこで、新中長期経営計画「Passion 2030」において、ESG基本方針、重要課題(マテリアリティ)、ESG推進ロードマップなどを定め、より積極的にESG経営を推進できる体制の構築に努めてまいります。

カンパニー制による組織のシンプル化をめざす

以上の対応を、迅速かつ確実に実現させていくために、2020年7月1日より、新組織体制「カンパニー制」へと移行し、こちらも大幅に権限委譲を強化しております。
この「カンパニー制」では、プレジデントとCMO*1をトップに、意思決定のスピードアップを図ってまいります。MD(商品政策)においては、顧客の変化に寄り添った新たな方針を、近々発表する予定です。
「カンパニー制」の一番の特徴は、事業軸(カンパニー)、商品軸、ホールディングス軸の三軸を設定し、それぞれに大きな権限を持たせることです。
また、この三軸による経営会議も新設されました。経営方針に基づき、業務執行の委任を受けた事業軸のプレジデントや商品軸のCMOには、思い切った事業拡大に積極的にチャレンジしてもらい、それをホールディングス軸のCSO*2がしっかりサポートするという役割分担になります。
いずれにせよ、この三軸による広範な権限委譲により、グループ内企業の個別最適ではなく、PPIHグループの全体最適を実現し、新たなフィールドを切り拓いていきます。
こうした新組織体制を着実に醸成・浸透させるために、「源流推進本部」をPPIHグループの行動指針の柱として新たに組成いたしました。
組成に至った理由の一つとして、今回の組織改編にあたり、「源流」の上司編第四条にある「恐怖支配をするな」という言葉に、私自身が改めて啓発されたことが挙げられます。これは、人事権の誤った行使が、私たちの掲げる「顧客最優先主義」という企業原理を脅かすということを示しています。
CEOである私はもちろん、すべての役員、幹部が、「源流」に則ったマネジメントを徹底することで、「顧客最優先主義」を実践しなければなりません。「源流」に基づく新組織の再構築を通じて、PPIHグループのさらなる飛躍に向け、果敢に進んでいくことをお約束いたします。

2020年12月



*1 Chief Merchandising Officer
*2 Chief Strategy Officer

PPIHグループの企業理念

PPIHグループのコアバリュー「源流」

創業者である安田隆夫の考えと思いが明文化された企業理念集「源流」。PPIHグループの全従業員と役員が受け継ぐべき行動指針であり、私たちの矜持と存在理由そのものです。

源流 PPIHグループの理念

企業原理

顧客最優先主義

PPIHグループが、突き詰めるべき姿勢

経営理念

第一条
高い志とモラルに裏づけられた、
無私で真正直な商売に徹する
第二条
いつの時代も、ワクワク・ドキドキする、
驚安商品がある買い場を構築する
第三条
現場に大胆な権限委譲をはかり、
常に適材適所を見直す
第四条
変化対応と創造的破壊を是とし、
安定志向と予定調和を排する
第五条
果敢な挑戦の手を緩めず、
かつ現実を直視した速やかな撤退を恐れない
第六条
浮利を追わず、
中核となる得意事業をとことん突き詰める
源流
創業会長 兼 最高顧問 安田 隆夫

いついかなるときも「顧客最優先主義」を貫くため、
「源流」に則った行動を心がけ、実践しています。
それは、この世界的な大変化が起きたときでも変わることはありません。

地域社会との共生

新型コロナウイルス感染症の影響による営業自粛により、休職または失業を余儀なくされた飲食店従業員の方を対象に、アルバイトスタッフを募集。PPIHグループの生鮮食品や総菜を取り扱う店舗にて、経験を活かしていただける就労機会を提供することで、生活基盤の確保を支援しました。
 また、自治体や近隣の学校と協議し、アルコールハンドジェルなどの衛生用品や、困窮世帯への食料品の寄付を行いました。地域の皆さまの安全・安心を守るために、何をすべきかを考えスピード感をもって、この活動に取り組みました。

従業員へのサポート

コロナ禍でも懸命に業務に励む従業員が、遺憾なく「変化対応力」を発揮できるようにサポートするため、3月6日に新型コロナウイルス緊急対策本部を立ち上げました。同本部からの感染予防に関する通達を通じ、感染予防と罹患が疑われる際の対策を徹底し、対応可能な部署を対象にテレワーク環境の整備や勤務時間の調整を実施しました。
 また、臨時休校になった小学校等に通う子どものために休暇を取得する従業員に対して、特別休暇を付与したほか、勤務実績などに応じた臨時福利厚生施策を全従業員に対して実施しました。

お客さまとのコミュニケーション

緊急事態宣言発令下で営業を停止する店舗や施設が多い中、感染防止対策を徹底し、お客さまの暮らしを守るために、地域のライフラインとしての役目を果たしました。コロナ禍において、お客さまが必要としているものを提供するために、さまざまなルートからマスクの在庫を確保するなど現場の迅速な判断力が発揮されました。  また、ドン・キホーテの多くの店舗では、店頭に設置したホワイトボードに生活必需品の入荷状況を掲示し、お客さまとの積極的なコミュニケーションに努めました。

PPIHグループの模倣不可能な価値

創業から変わらないことが、未来を変えていく。

PPIHグループは、創業40周年を迎え、米国・アジア圏に店舗ネットワークを展開するグローバル企業へと成長しています。東京・杉並区にたった1店舗だった店舗数も、海外を含めると631店舗*にまで増え、創業時には想像もつかないほど多くのお客さまにお買い物を楽しんでいただける規模にまで、ネットワークを拡大しました。この成長を支えているのは、創業時から変わらず「顧客最優先主義」を追求することで形成された強み「権限委譲×変化対応力」です。新たな時代においても、この独自の強みを活かし、さらなる成長をめざします。

* 2020年10月31日現在

売上高 営業利益 店舗数

私たちの原点

1978年、創業者である安田隆夫は、当社グループの前身である雑貨店「泥棒市場」を開業しました。小売業における経験のない状態からのスタートでしたが、誰よりも情熱を持ち、顧客最優先主義を徹底しました。コンビニエンスストアが深夜11時までの営業だった当時、深夜12時まで営業する雑貨店は多くのお客さまの評判となりました。
 創業時から変わらない顧客最優先主義という姿勢と「他の大手小売企業の真似は絶対にしない」という独自の逆張り発想が、今もなお私たちの原点として存在しています。

泥棒市場
顧客最優先主義の追求から始まった

創業の精神から生まれた不変の強み

権限委譲 変化対応

時代に合わせた強みの最大化

グループ創業40周年を迎え、次なる成長を遂げるための体制を構築しています。カンパニー制という新たな組織体制により、大幅な権限委譲を可能にし、グループの全体最適を図っています。また、現場の変化対応力をより強化するため、マシュマロプロジェクトを筆頭としたAIやデジタルを用いた戦略も着々とスタートしています。創業時から受け継がれる権限委譲の文化は、新たな時代を切り拓く強みとして息づいています。

MEGAドン・キホーテとAPITA

PPIHを取り巻く環境

あらゆる変化に向き合い、リスクへ
迅速に対応し、機会を最大限に活用する

現代社会は、情報通信技術の進展や市場の開放などによって、さまざまな分野でグローバル化が進むなど、急激な変化を遂げています。日本においては、超高齢化社会に突入し、経済規模の縮小や社会保障制度と財政の持続可能性といった難しい問題が山積しています。企業は、今回の新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、今まで以上にFintech、AI技術、Eコマースといったテクノロジーの動向を見極め、その変化に対して向き合わなければいけません。
 海外では、新興国が高い経済成長率を維持しており、それらの国における高い人口増加率が経済効率向上にもプラス効果をもたらしている一方、世界規模で資源枯渇や環境問題が深刻化しており、課題解決への積極的な貢献が求められています。

2065年の日本
2065年の日本
グローバルメガトレンド
グローバルメガトレンド グローバルメガトレンド
世界経済に占める各国のGDPシェア 世界経済に占める各国のGDPシェア

PPIHグループは、社会課題への取り組みが新たな事業機会となり得ると考え、
予測されるさまざまな問題に対処しつつ、
持続的な成長のための基盤づくりを継続しています。
これからもますますスピードを上げて、世の中の変化に対応していきます。

PPIHグループは、持続可能な成長を維持するため、規模の拡大のみならず、低コスト・高収益の実現に向けた構造改革を両立していきます。 PPIHグループは、持続可能な成長を維持するため、規模の拡大のみならず、低コスト・高収益の実現に向けた構造改革を両立していきます。

PPIHグループの対応

国内における事業ポートフォリオ経営

多様な業態や店舗ロケーション、店舗規模などにおいて事業ポートフォリオ経営を順調に推し進めています。ユニーとのシナジーを最大化し、さらなる事業基盤の強化をめざすため、新戦略「Newアピタ・ピアゴ構想」を発表。ユニーの持続的な成長をめざし、総合スーパー「アピタ」、食品スーパー「ピアゴ」をリブランディングしていきます。地域のお客さまの声や店舗スタッフのアイデアをプラスし、「毎日行きたくなる店舗」づくりをめざします。

「エコ・ファーストの約束」を通じた環境マネジメント

PPIHグループは、「環境に配慮した企業市民であること」という環境方針のもと、事業活動を通じて持続可能な社会構築に寄与することに努めています。ユニーは環境への取り組みのトップランナーとして、環境大臣と「エコ・ファーストの約束」を交わしています。「持続可能な開発目標」(SDGs)の達成に向けて、食品廃棄物削減やリサイクルなどを通じて、お客さまとともに環境問題の解決に取り組んでいます。

社会の変化と競争優位性を源泉とした事業活動 社会の変化と競争優位性を源泉とした事業活動

価値創造新時代へ突入。
「変化対応」する価値創造ストーリー

PPIHグループの事業活動のコアとなる「顧客最優先主義」を貫くために、基盤であるガバナンス体制を強化し、「源流」の精神を体現する人財の育成を進めます。また、新中長期経営計画「Passion 2030」によって「GMS戦略推進」などの価値創出を促進していきます。
 私たちは、現在の世界大転換期を「価値創造新時代」と捉え、DX(デジタルトランスフォーメーション)や営業戦略などさまざまな取り組みにより新しい価値を生み出し、あらゆる課題解決を実現します。

VISIONとMISSIONと創出する価値 VISIONとMISSIONと創出する価値