PPIHグループのビジネスモデル

新中長期経営計画「Passion 2030」

新中長期経営計画「Passion 2030」をスタート

PPIHグループは、前中期経営計画「Vision 2020」で掲げた売上高1兆円、店舗数500店、ROE15%を、1年前倒しで2019年6月期に完全達成し、2020年2月に新中長期経営計画「Passion 2030」をスタートさせました。
 2020年6月期は、コロナ禍にあっても、強みである変化対応力を発揮し、31期連続増収増益を達成しました。一方で、事業環境の変化は大きく、今後も成長を続けていくためには、従来の延長線上にはない新たな成長戦略への移行が不可欠と考えています。
 今回の新型コロナウイルス感染症拡大によって引き起こされた人々の行動変容やお客さまの消費価値観などの変化は、不可逆なものと捉えています。PPIHグループは、世の中の変化を成長機会として、今後もお客さま理解を深めながら、スピード感に富んだ変化対応を実践し、情熱をもって社内外の競争に挑戦し続けます。

Passion 2030

顧客理解を深め、顧客最優先主義を
徹底することによる企業価値向上

1.情熱 2.世界一 3.原動力 1.情熱 2.世界一 3.原動力
国内/盤石なる2兆円体制/オンリーワンリテーラーとしての収益力向上と海外/大望の1兆円体制へ/ジャパンブランド・スペシャリティストア構築と拡大 国内/盤石なる2兆円体制/オンリーワンリテーラーとしての収益力向上と海外/大望の1兆円体制へ/ジャパンブランド・スペシャリティストア構築と拡大

国内外のさらなる成長を後押し

他の追随を許さない編集型MDの追求、当社グループ最大の強みである圧倒的な現場の闘う力を支援・強化するデジタル化など、国内外の戦略を迅速に実行していくために、持ち株会社として全力で支援していきます。

・スケールメリットの活用と業態に即したMD政策・SPA化

ニーズを捉えた総菜(モバイルフード・デリカ)を強化し、メーカーとのコラボPBなどによりバリューチェーンを拡大していきます。

マシュマロ ・「マシュマロ構想」推進

権限委譲などの当社グループの強みと共存できるようにITやAIを活用し、外部企業と協業しながら、新たな時代への対応策を構築します。詳細は下記URLをご覧ください。
https://marshmallow.inc/

・「顧客最優先主義」を支える「経営人財」「商人」をつくる組織・制度

カンパニー制の移行による経営者意識の醸成・浸透と、データを活用した人財の見える化、グローバル商人の育成支援などを進めます。

・ めざすべき社会価値創造(ESG)プログラム推進

総合小売業の事業活動を通じて、ESG活動を推進し、持続的な成長に努めます。

・ 経営戦略と一体化した財務戦略推進

効率的な資金調達や設備投資を行い、バランスシートの最適化を図ります。

国内事業

国内事業の概況

コロナ禍において示した変化対応力

厳しい状況下において見せた底力

コロナ禍によりインバウンド需要が蒸発し、緊急事態宣言により都心における客数が激減。その逆風の中で、企業原理である「顧客最優先主義」の徹底と、強みである変化対応力を発揮しました。
 当社の店舗では、あらゆる取引先から商品を集め、またユニー、ドン・キホーテ双方の商品本部が連携を取りながら物資の確保に全力で取り組みました。そのおかげでコロナ禍のピーク時にあっても、マスクや消毒液、トイレットペーパーなどをしっかりと店頭に並べることができました。お客さまの暮らしを守るために営業を継続し、他店で欠品している商品を仕入れ、販売し続けたことは、SNS等の口コミを主体に情報拡散され、来店客数の増加につながりました。
 初めて直面する異常事態下で暮らしを守るために営業を継続し、地域のライフラインとしての役目を果たすとともに、お客さまの需要が変化する中においても各店舗でさまざまな取り組みを実施し、確かな回復を見せました。

コロナ禍において示した変化対応力 コロナ禍において示した変化対応力
国別ドン・キホーテ免税客数の推移とロケーション別売上高の推移
「想定外」の事態は成長のチャンス

商業環境が危機的状況に陥る中で、郊外生活商圏に強いユニーが業績を下支えし、ドン・キホーテもインバウンドや都心商業ニーズが完全蒸発する中、郊外ロードサイド店を主体に変化対応し、盛り返すことができました。今回の「想定外」の事態は、両者の良い面が底力として発揮され、互いの強みを再確認する機会となりました。
 また、コロナ禍によって世の中の状況が大きく変化する中、早々に品薄になったテレワーク関連のグッズをはじめ、バリカン、ボードゲーム、ジグソーパズル、タコ焼き機、ヨガ・トレーニンググッズなど、自宅で過ごす時間を充実させるための商品が好調に推移しました。中には、電化製品のリモコンでの需要が考えられる「ボタン電池」や「花火」など、意外な商品の需要増も多くありました。今後も試行錯誤を行い、お客さまの要望に応えられる変化対応力という強みをもって、ワクワク・ドキドキ感を感じてもらえるような商品を提供し、店舗の「PPIHらしさ」を高め続けていきます。

「想定外」の事態は成長のチャンス

コロナ禍における店舗での変化対応力

高単価商品から客点数へ切り替え単身ニーズをキャッチ
(ドン・キホーテ道頓堀店)

ジップロックやスポンジ、食品ラップなど、セット販売の商品の中身をバラし、1つ10円から購入できるバラ売りコーナーを新設。単身層のお客さまにアプローチしました。

ドン・キホーテ道頓堀店
MEGAドン・キホーテ渋谷本店
いま来店されるお客さまを大切に
(MEGAドン・キホーテ渋谷本店)

新たに店頭に災害対策コーナーを設け、カップ麵や飲料水を陳列することで、まとめ買い需要に応えました。

ホワイトボードによるお客さまとの交歓
(ドン・キホーテ中目黒本店)

ホワイトボードで商品の入荷状況などを掲示。お客さまからは「ひと目でわかるので助かる」などの感謝のメッセージをいただき、従業員とお客さまの交歓ツールになりました。

ドン・キホーテ中目黒本店

コロナ禍におけるPPIHグループの変化対応力

新型コロナウイルス感染症により、ダイヤモンドプリンセス号における多くの乗客や乗組員が下船できない状態となりました。こうした状況を支援するため、部署横断的にプロジェクトチームをつくり、2月14日から4回にわたって物資提供や販売による支援を行いました。物流部、各MD開発本部、PB事業戦略本部などの関係部署が迅速に連携し、バスタオルやマスク、衣類など、合計18トン分もの支援物資を提供・販売しました。また、物資は船の乗員にすぐに手渡せるよう、すべての商品を小分けにしてトートバッグに入れた状態にするなどの工夫をしました。こうした気遣いと迅速な対応に、ダイヤモンドプリンセス号の運営会社より感謝の手紙をいただきました。

支援物資提供の様子

支援物資提供の様子

すべての商品を小分けにしたトートバッグ

すべての商品を小分けにしたトートバッグ

国内事業の今後の取り組み

店舗拡大による成長から、既存店磨き×顧客収益最大化への転換

業態・業務改革は好調に推移

国内事業においては、多様な業態や店舗ロケーション、店舗規模による事業ポートフォリオ経営を推し進め、収益性を強化しています。さまざまな業態の棲み分けにより、グループシナジーを創出しスケールメリットを最大化することで、強固な事業基盤構築をめざします。
 ユニーが運営する「アピタ」「ピアゴ」の一部店舗を「MEGAドン・キホーテUNY」へ業態転換する計画は順調に進捗しており、2020年6月末時点で累計41店舗となりました。生活必需品を中心に「品揃え」と「価格」がお客さまに選ばれて、商圏内ポジションを高めながら、高成長を果たしています。

業態転換店の進捗

ユニー再成長のカギを握るNEWピアゴ

権限委譲に基づいた個店経営を本格導入したNEWピアゴ1号店として「PIAGOプラス妙興寺店」がリニューアルオープン。設立50周年を迎えるユニーが次の50年へ向けて既存店のリブランディングをスタートしました。2021年6月期においては、10店舗程度を実験改装店としてリニューアルする予定です。

コンセプトはフロア別カテゴリー特化の「進化型GMS」

現状の中心顧客であるシニア層をしっかりと維持しつつ、これまでドン・キホーテが集客を苦手としていたファミリー層を取り込むことを目的に、フロアごとにカテゴリーを分けた構成に改変。さらに、ユニー初の各フロア専任の「フロア店長」制の導入や、お客さまに最も近い立場で働くメイトさんが主体となり、「お客さまの立場からの発想」で買い場をつくるなど、UDリテールから学んだことを活かして、これまでのユニーにはない手法を取り入れています。
 2020年6月27日にオープンして以降、売上計画目標に対して好調な滑り出しを見せています。

妙興寺店フロア構成の変化

MD・PBにおける取り組み

取締役 兼 常務執行役員 CMO(非食品)榊原 健

編集型MDの追求とPBへの取り組み

編集型MDとは、既存のお取引先さまから仕入れた定番商品やスポット商品でベストな品揃えを構築していくというものです。
 PPIHグループのどのお店も「楽しんでもらう」ことがコンセプトになっていますので、お客さまが来店し楽しめるようなものに関しては、引き続きどこにも負けない品揃えで展開していきます。また近年は、ファミリー層のお客さまが増えていることもあり、従来の若い年齢層をターゲットとしたものからファミリーでお買い物できるように品揃えを増やしてきたということがあります。一方で、品揃え主義からの脱却も必要であり、同種類の商品は一つひとつを吟味していくとともに、その先のニーズがあるような ものに関しては果敢に挑戦していきます。
 従来の仕入れやスポット商品で取り上げることができない、潜在的なニーズに応えるのがPBです。主に家電、アパレル、家庭雑貨などのカテゴリーに関してはPBの需要が大きくなると考えています。今後は、編集型MDで進めるものとPBとしてつくっていくものの見極めが重要であり、編集型MDでは全店に供給することができないようなカテゴリーに関してフォローアップすることも、PB開発の大きな役割だと考えています。目標としては、「〇〇を買うならドン・キホーテだね」と言っていただけるような強いカテゴリーをつくっていくことが一番重要だと考えています。編集型MDとPBにより、中長期的に商品力や品揃え、価格などでNo.1となるカテゴリーの数を増やしていくことをめざします。

商品の改廃

商品の改廃は、店舗運営の大きな課題と認識しています。的確な選定による無駄のない商品が、適正な価格で置かれているというのが理想であり、改廃の基準であるとも考えています。置いてある商品は存在価値、存在意義がある商品でなければなりません。
 現在の取り組みの一つとしては、「商品・在庫活性部」の新設があります。これは元々は本社の管理部門を営業のMD本部と同列に配置し、本部仕入れ・店舗仕入れを問わず回転率の低い商品にはアラートを出し、実績が上がりそうな“兆し”のある商品が見つかれば、商品部と連携するという攻撃的なディフェンス部門をめざしています。また、単なる商品在庫管理部としないで「商品・在庫活性部」としたのは、売れていない商品を間引く「守り」のためだけではなく、回転率の高い商品を把握し、棚を空けて新たな商品を仕入れるといった「攻め」の意味合いを込めているためです。
 今後は、間引くことで置いてある商品を際立たせられるように、改廃にスピード感を持って取り組んでいきます。

スケールメリットの獲得とデメリットの排除

PPIHグループは、規模拡大や業態の幅が広がるスケールメリットを、今後さらに活かしていきます。仕入れにおいては、ユニーの加工食品と日用消耗品で原価低減が図られるなど、ドン・キホーテが得意としている部分でユニーに好影響をもたらしています。一方で、フレッシュフードに関しては、ドン・キホーテにおけるユニーのプロセスセンターといったインフラの活用など、仕入れ価格だけではないシナジーも生まれています。
 スケールデメリットは、権限委譲による個店主義と全体最適の問題です。全体最適を追い求めると地域及び店舗ごとの特色が出ず、変化対応も遅くなるため、各店舗と全体のバランスは常に念頭に置かなければならないところです。
 また、今後海外店舗が増えて売上も伸びてくれば、国内外セットでより大きなスケールメリットを生み出せると考えています。

海外事業

海外事業の概況と今後の取り組み

大きな可能性を持つ海外事業

オンリーワンによる成長可能性

海外事業は、「ジャパンブランド・スペシャリティストア」として、日本産食品を主体とした、直輸入型のオンリーワンMDを展開しています。「米国事業」と、「DON DON DONKI」を展開する「アジア事業」で、店舗ネットワークを積極的に拡大。米国事業は2006年に米国ハワイ州での店舗運営を目的としてDon Quijote (USA)Co., Ltd.を連結子会社化したのを皮切りに、ハワイ 28店舗、カリフォルニア 10店舗となりました。アジア事業は2017年シンガポール1号店「DON DON DONKI オーチャードセントラル店」よりスタート。現在、香港 4店舗、タイ 2店舗、シンガポール8店舗となっています(2020年10月31日時点)。
「ドン・キホーテ」は、国内に競合が存在しないオンリーワンの業態で、大きな成長を遂げてきましたが、海外における「DON DON DONKI」も同様に、進出各国に直接的な競合業態の存在しないオンリーワンの業態であり、大きな成長の可能性を持っています。PPIHグループの5~10年後の成長を見据え、海外事業展開を次の成長ドライバーと位置付けています。

海外事業は好調!中でも香港展開は絶好調!

アジア、米国ともに業績好調ですが、その中でも特に香港は絶好調に推移しています。2019年7月にオープンした香港1号店は、ホテルや他の店舗が入る複合ビルの地下の1フロアにあります。日本製の商品や日本向けの商材を扱う「ジャパンブランド・スペシャリティストア」をコンセプトに、食料品関係を中心に商品構成しています。日本からの輸入食品でも、現地価格より2~5割安く、仕入れにおいて日本国内で多くの店舗を展開しているスケールメリットを活かすとともに、直接物流パートナーに依頼するなど自社輸入を行い、極力価格を抑えられるよう努力しています。日本のドン・キホーテに比べて非食品の取り扱いが少ないですが、お客さまの声をお聞きするとともに売れ筋商品などの検証を行い、今後、商品構成比も変化させていきます。
2019年12月に商業施設「OPモール」内にオープンした香港2号店「DON DON DONKI OPモール本店」は、1号店の約2倍の売場面積を誇るアジア最大級の店舗です。テーマを「日本の祭り」として、提灯やうちわなどを飾り、日本らしさとドン・キホーテらしいにぎやかさを演出しています。
2020年7月には「DON DON DONKIパールシティ店」を香港島に初出店しました。海外で根強い人気がある日本食品を豊富に取り揃えているほか、お土産として人気のお菓子・化粧品の取り扱いを強化しています。

取締役 兼 常務執行役員 CMO(Global) アジアカンパニーバイスプレジデント 松元 和博 取締役 兼 常務執行役員 CMO(Global) アジアカンパニーバイスプレジデント 松元 和博

世界に日本産品の流通革命を起こす
Pan Pacific International Club (PPIC)発足

2020年10月に発足したPPIC(ピック)は、日本の農畜水産物の輸出拡大に向けた生産者とPPIHグループのパートナーシップ組織です。PPIHグループにとっては、年間を通して安定した品質・数量・価格で商品を仕入れられるメリットがあり、生産者側には「安定した出荷先の確保」や「市場相場・天候に左右されない出荷価格」といった利点があります。ご入会いただくことで、商談の参加や継続的かつ安定的な商品出荷が可能になるほか、作付計画や製造計画のサポートを受けることができます。
PPIHグループが、「ジャパンブランド・スペシャリティストア」をコンセプトに展開する海外店舗では、日本の食品が現地ファン獲得の大きな要因になっています。品質の高さに定評のある日本産品を、海外でも購入しやすい価格で提供できる環境を整備し、世界に日本産品の流通革命を起こすことで、すべてのステークホルダーがメリットを享受できる好循環をつくり出します。2030年には、農畜水産物の海外輸出額において3,000億円をめざします。

PPIC 3大憲章 PPIC 3大憲章
今後の海外戦略

海外事業は、米国及びアジア圏を中心に積極的に店舗開発を進めるとともに、お手頃な価格で日本産品の魅力を提供し、地域の皆さまに末永くご愛顧いただける店舗の創造に努めていきます。新型コロナウイルス感染症のピンチを店舗開発のチャンスと捉え、DON DON DONKI業態の展開を着実に実行し、東南アジアや東アジア地域においては、出店国に合わせてローカライズしながら多店舗展開を進めていきます。日本産品の安定した調達体制の構築と物流網を整備し、さらなる拡大をめざします。
 2021年6月期における海外売上高比率は現在の約6.8%から8%以上に、営業利益への比率も現在の約4.0%から大きく増える見込みです。今後も、中長期目標で掲げている海外売上高1兆円の達成へ向けて、海外事業の拡大に積極的に取り組んでいきます。

海外売上高目標
今後の海外戦略