PPIHグループの経営基盤

CFOメッセージ

経営基盤

ROICとWACCの比率を重視し、
攻めの経営で企業価値向上に努めます。

2019年6月期の振り返り

2015年に策定した2020年6月期を達成年度と定めた中期経営計画「ビジョン2020」におけるKPI( 売上高1兆円、店舗数500店、ROE15%)は、すべて1年前倒しで完全達成することができました。さらに2019年6月期は、ユニーグループを連結子会社化したこと などにより、「売上高」「総資産」「時価総額」が、いずれも1兆円を超えて、国内小売企業トップクラスの事業規模になりました。
 1989年に「ドン・キホーテ」1号店を開業して30周年を迎えた2019年6月期は、大台超えとなる「30期連続増収営業増益」を達成 しました。さらに、私たちの最大の財産であるお客さま総数は、この1年間に5億2,889万人となり、PPIHグループ店舗でお買い物を 楽しんでいただきました。

小売業界の事業環境認識

小売業界を取り巻く外部環境は厳しさが続いており、消費者マインドは2018年秋ごろから一段と冷え込んでいるように見えます。 また、税金や社会保険料などの「非消費支出」の増加が可処分所得を圧迫し、「モノ消費」に対する価格感応度を否応なしに高めて います。消費者は「何をどこでいくらで買うか」という意思決定における目線をますます厳しくしており、節約志向や選別消費が主流 を占めています。
 内閣府が発表する消費者マインドの状態を示す消費者態度指数は、悪化の一途をたどり低水準で推移していますが、2019年10月に 実施された消費税増税による新たな負担増も加わって、消費者マインドは一層厳しくなることが予想されます。  すなわち、小売業界における店舗間の格差が拡大することで、商圏内の勝者と敗者が明確になる優勝劣敗が加速し、当社グループが ますます成長・拡大する環境になっていくものと認識しています。

攻めの経営と財務戦略

2020年代半ばまでは、国内事業のさらなる拡大のため、経営資源を集中的に投じます。同時に海外事業については、店舗展開を一歩ずつ進めつつ、実験と検証を重ねてまいります。
 国内事業は、ユニー約100店の業態転換が当面の最大の成長ドライバーと考えていますが、主力のドン・キホーテなどの新規出店と既存店の堅実な成長も必須です。
 積極的な事業拡大と成長のための設備投資額は、年間400億円程度を想定しており、内訳は約75%をリテール事業の拡大に投じ、約25%をIT投資や既存店のメンテナンス費用などに充当する予定としています。
 成長投資に備える資金調達は、レバレッジを効かせて適切に実施していく所存でありますが、ネットD/Eレシオについては1倍以下を基本方針とすることで、財務規律を保っていきます。
 また、ユニーグループが連結されたことで急膨張したバランスシートについては、資産効率及びキャッシュ・フロー創出力を高めて、適正水準に改善してまいります。

資本政策とESG

資本効率向上や持続的な企業価値創造を意識した戦略を実行するにあたって、資本コストを上回るROE(株主資本利益率)の改善が大切であると考えています。
 ROIC(投下資本利益率)とWACC(加重平均資本コスト)の比率を重視して、投資に対するリターンという尺度をステークホルダーの皆さまとの対話における共通言語としながら、長期にわたる成長をシミュレーションしています。
 さらに、ESG分野の情報開示については、将来的なリスクの軽減や資本コストの低減につながる重要な議論であると認識し、その充実に努めております。当社がめざすべきマテリアリティの特定やその推進を行い、小売企業として環境に配慮した店舗運営や社会貢献を行い、さらにガバナンス体制の強化をしていくことで、責任ある企業市民として存在感を高めていきたいと考えています。

資本政策とESG

株主還元方針

株主還元については、「高リターンの本業投資」と「累進的配当政策」を基本方針としております。2019年6月期におけるROEは15.6%。年間配当金は前期比25%増配の1株につき40円を実施しました。これにより増配は17期連続となり、配当性向は13.1%となりました。中期的には、連結配当性向は20%以上をめざします。
 今後も「顧客最優先主義」と「企業価値拡大」を追求しながら、EPSの長期的な成長に応じた配当水準の向上に努め、株主還元の 充実を図ってまいります。

年間配当金とROEの推移

財務・非財務サマリー

*1 1株当たり情報は、2015年7月1日の株式分割が2010年6月期の期首に行われたと仮定して算定しています。
*2 対象データ:国内主要法人
  掲載している数値は、Scope 1とScope 2を合算したものです。
*3 対象データ:国内主要法人

グループ従業員(正社員)男女内訳

グループ従業員(正社員)男女内訳

女性従業員は前期より1,427人増の3,590人、男性従業 員は4,243人増の9,956人となりました。また、2019年6月 期の国内の女性管理職比率は7.4%となりました。

新卒社員に占めるアルバイト出身者・外国籍従業員*4の割合

新卒社員に占めるアルバイト出身者・外国籍従業員の割合

2019年6月期の新卒社員のうち、アルバイト出身者の正社員雇用率は26.6%でした。また、今後の海外展開やインバウンド需要の拡大を見据えて、外国籍従業員の採用と育成を強化しており、外国籍従業員比率は17.8%となりました。
*4 対象データ:国内主要法人

majica会員数/客単価/売上高構成比

majica会員数/客単価/売上高構成比

自社発行型電子マネー「majica」の会員数は、2019年6月時点において、816万人となりました。売上高構成比は30.8%、 客単価は平均客単価を上回る2,818円となり、リピーターの増加と収益拡大に寄与しています。

オリジナル商品*5 売上高/売上高構成比

オリジナル商品 売上高/売上高構成比

オリジナル商品は、お買い得感が支持された「食品」が貢献し、売上高は952億円(前期比4.8%増)、同構成比は10.9%となりました。
*5 オリジナル商品 : プライベートブランド「情熱価格」及びOEM商品対象データ :(株)ドン・キホーテ及び(株)長崎屋

経営の透明性を高めるガバナンスの強化

PPIHグループは、企業原理である「顧客最優先主義」を徹底し、コーポレート・ガバナンスとコンプライアンスの強化を図るとともに、積極的なディスクロージャーを行い、社会と共生する当社への理解を深めていただくことが、企業価値増大のための重要な経営課題と位置づけています。高い倫理観に則った事業活動こそが、企業存続の前提条件であるとの理念に立ち、社内での早期対応体制を構築し、社外専門家の助言を仰ぎながら、企業統治体制とその運営の適法性を確保しています。
 とりわけコンプライアンスについては、組織体制を進化させるとともに、法令遵守意識の向上、経理部門及び内部監査部門、検査・調査部門の強化などの取り組みの徹底と充実を図りながら、企業活動を推進していきます。

コーポレート・ガバナンス体制図( 2019年9月25日現在)

コーポレート・ガバナンス体制図

最高意思決定機関としての取締役会

当社は、取締役会を月1回以上開催し、企業価値向上に向けた当社の重要な経営戦略の策定などについて活発な議論を行っています。 取締役会は14名で構成されており、そのうち社外取締役5名全員は独立役員として選任されているため、株主の皆さまと同じ独立した視点と幅広い見識を取り入れることが可能であり、適切で透明性の高い経営判断が行われる体制になっています。
 当社の取締役会は、経営の意思決定機関として、法令や定款による取締役会の専決事項とされている項目及び取締役会規程に定められている重要事項(重要な経営方針の策定、重要な規程・管理制度の制定及び改廃など)を決議しているほか、純粋持株会社として、グループ全体の経営方針などを決定しています。

取締役会 取締役会

ガバナンス体制強化の変遷

当社は、取締役会を月1回以上開催し、企業価値向上に向けた当社の重要な経営戦略の策定などについて活発な議論を行っています。取締役会は14名で構成されており、そのうち社外取締役5名全員は独立役員として選任されているため、株主の皆さまと同じ独立した視点と幅広い見識を取り入れることが可能であり、適切で透明性の高い経営判断が行われる体制になっています。
 当社の取締役会は、経営の意思決定機関として、法令や定款による取締役会の専決事項とされている項目及び取締役会規程に定められている重要事項(重要な経営方針の策定、重要な規程・管理制度の制定及び改廃など)を決議しているほか、純粋持株会社として、グループ全体の経営方針などを決定しています。

株主総会移行前

株主総会移行後

取締役会から経営陣への委任範囲

当社は、監査等委員会設置会社への移行に伴い、取締役会の決議による重要な業務執行の決定の全部または一部を、取締役に委任して います。
 さらに当社は、激変する外部環境に柔軟かつ迅速に対応するため、現場に対して大胆な権限委譲を行っていますが、職務権限規程に おいて、取締役をはじめとする経営陣及び経営幹部に委任される事項を、その重要性や金額などによって明確に定めるなど、事業運営 に関するガバナンスの充実に努めています。

取締役の職務執行

取締役の適正な職務執行を図るため、社外取締役を継続して選任し、取締役の職務執行の監督機能を向上させるとともに、社外取締役を含む監査等委員会が、取締役(監査等委員である取締役を除く)と独立した立場から、公正で透明性の確保された監査を徹底しています。
 さらに、取締役の職務執行が効率的に行われることを確保するために、取締役の職務分掌と権限を明確にし、組織体制に関する規程の見直しや整備を適時適切に行っています。経営環境の変化に応じて、組織・業務運営体制の見直しも柔軟に行います。
 また、取締役の職務執行に関する情報の保存及び管理については、株主総会議事録、取締役会議事録及び重要な会議の議事録、並びにこれらの関連資料を保存し、管理するための担当部署を置き、これらを10年間保存し、必要に応じて閲覧が可能な状態を維持しています。

取締役会の実効性評価

当社取締役会は少なくとも1年に1回以上、第三者機関を利用して取締役会の実効性を評価しています。評価の結果を踏まえ、課題解決に向けた取り組みを進めることで、取締役会の実効性の強化に一層努めるとともに、ガバナンス体制を拡充し、持続的な成長及び中長期的な企業価値向上をめざします。

評価プロセス

評価プロセス

2019年6月期の評価結果
総 評 経営理念を踏まえた活発な議論をもとに適切かつ迅速な意思決定を行うとともに、厳格な監督機能を発揮するこ とで、中長期的な企業価値向上に実効的な役割を果たしていることを確認することができたため、取締役会の実 効性は確保されているものと評価しました。一方で、ユニー株式会社の子会社化や海外店舗が増加していること を踏まえ、グループ会社を含むコーポレート・ガバナンス体制のさらなる強化が求められる結果となりました。
当社取締役会の強み ①経営理念等を十分に踏まえた取締役会運営
②適切な業務執行権限の委譲による迅速な意思決定プロセス
③バランスのとれた取締役会の構成。

当社取締役会の課題

課題 ❶ への対応状況

2019年6月期においては、若手取締役に対し、専門知識を有する社外取締役との意見交換会や、外部専門機関及び取締役会事務局 によるコーポレート・ガバナンスに関する講義を適宜実施しました。また、ESGやコンプライアンスなどをテーマにした外部セミナーを活用するなどして、トレーニング機会の提供や支援を行いました。

役員報酬制度

取締役(監査等委員である取締役を除く)の報酬については、株主総会の決議により承認された報酬総額の範囲内で、経営成績、財務状況及び経済情勢を考慮のうえ、取締役会で決定しています。また、監査等委員である取締役の報酬等については、株主総会の決議により承認された報酬総額の範囲内で、監査等委員の協議により決定しています。
 取締役(監査等委員である取締役を除く)の基本報酬は年額600百万円以内とし、基本報酬とは別枠の株式報酬型ストックオプションとしての報酬を年額400百万円以内と株主総会で決議しています。2019年6月期においては、個々の役員の職責や貢献、会社の業績等を勘案して報酬を決定しています。

2019年6月期の役員報酬

2019年6月期の役員報酬

2019年6月期の個別役員(連結報酬などの総額が1億円以上である者)報酬

2019年6月期の個別役員(連結報酬などの総額が1億円以上である者)報酬

株式報酬型ストックオプション

当社は2014年9月から、役員退職慰労金制度を廃止するとともに、株価上昇によるメリットのみならず株価下落によるリスクまで も株主さまと共有し、取締役の中長期的な業績向上と企業価値向上に対する貢献意欲や士気を一層高めるため、取締役(監査等委員 である取締役を除く)に対し、行使価格を1円とする株式報酬型ストックオプション制度を導入しています。

コンプライアンス委員会の設置

弁護士及び社外取締役などの外部有識者を中心として、不正防止の立案、検査及び調査の計画立案・検証、他社不正事例の共有と検証などを行っています。社外弁護士を委員長とするコンプライアンス委員会は、取締役、社外取締役(監査等委員)、複数名の社外弁護士で構成されています。
 さらに、業務の適正を確保するための整備として、コンプライアンス担当役員を任命し、コンプライアンス及び内部統制に関する事項を統括しています。また、コンプライアンス担当役員は弁護士及び社外取締役などの外部有識者を中心とした「コンプライアンス委員会」と連携し、高い倫理観に則った事業活動を確保し、ガバナンス体制とその運営の適法性の確保に努めています。コンプライアンス担当役員とコンプライアンス委員会は、グループ会社も含めた組織横断的なコンプライアンス上のリスク分析と評価を実施し、リスクの最適化に対応しています。

コンプライアンスへの取り組み強化

当社グループは、すべてのステークホルダーから信認を得て社会的責任を全うすることが、真のコンプライアンスであると考えています。そこで、法令違反などの通報窓口として「コンプライアンスホットライン」を設置。同制度に通報された内容はコンプライアンス委員会で審議を行い、その内容を適時適切に取締役及び監査等委員会に報告しています。
 また、従業員とその家族の心とからだ、暮らしに関する悩みの解決を図るため、「なんでもあんしん相談窓口」を設置しています。これらは社内規程に基づいて運用し、公正な取引と安全で安心な商品・サービスの提供につなげています。

コンプライアンスホットライン

内部通報制度

「 パートナー様専用ホットライン」を設置

パートナーさまと節度ある健全な関係を保つために、当社グループ取引担当者の対応について、パートナーさまからお気づきの点 をお知らせいただけるよう、社内外に「パートナー様専用ホットライン」を設けています。パートナーさまからの声を真摯に受け止め、速やかに改善を図るとともに、公正な取引を確保し、より強固な信頼関係の構築に努めています。

内部通報制度

リスクを未然に防ぐマネジメント体制

店舗が遵守すべき法令を「ストアコンプライアンス」としてリスクランクを設定し、店長や店舗従業員を対象としたe-ラーニングや、店舗セルフチェックシートの運用により、コンプライアンス体制の増強を図っています。また、法令違反検査を担当するグループ会社による月次単位の「チェック体制」と店舗の法令遵守徹底に向けた「改善フォロー体制」を構築。エリア責任者や店長、管掌部署が連携し、法令遵守を維持・継続する体制を強化しています。

リスクを未然に防ぐマネジメント体制

リスクを未然に防ぐマネジメント体制

防災対策や従業員の防災意識の強化

当社グループは、店舗ごとに防災対策の責任者を選任しています。定期的な防災訓練の実施や、被災時の行動指針のマニュアル化 のほか、消防法違反撲滅に貢献した従業員の表彰など、店舗の防災意識の向上に努めています。また、2014年、ユニーの稲沢本 社敷地内に「免震棟」を建設しました。災害により、統括機能がマヒした場合でも、免震設備で守られたライフラインと通信機能 で店舗をサポートし、速やかな営業復旧や営業継続につなげる体制を整えています。これらの取り組みにより、災害の際も慌てる ことなく的確な対応が可能となります。

ドン・キホーテ店舗における防災訓練の様子

ドン・キホーテ店舗における防災訓練の様子

ドン・キホーテ店舗における防災訓練の様子

ユニー店舗における防災訓練の様子

ユニー店舗における防災訓練の様子

ユニー本社の「免震棟」

ユニー本社の「免震棟」

商品調達における責任

オリジナル商品の企画製造プロセスにおいては、私たちがサプライチェーンの責任者としての自覚を持ち、生産を委託する海外工場に対して、労働基準や職場環境、各工程における安全管理や品質管理などに関する現地調査を行っています。約100項目の基準を設けた評価表と工場内部の画像報告書を作成し、適切な労働環境や品質の維持管理に努めています。

リスクを未然に防ぐマネジメント体制

フェア、アクティブ、クイックなIR活動

PPIHグループは、ステークホルダーの皆さまと積極的に対話を行うことにより、社会の変化やニーズを捉えて、課題解決に努めています。
 株主や投資家の皆さまに対して、フェア(公正なIR活動)、アクティブ(積極的なIR活動)、クイック(タイミング良く適切なIR活動)を基本コンセプトに、IR活動を行っています。1on1のミーティングはもとより、店舗見学会やラージ・スモールミーティングなどの活動を通じて、経営の透明性向上と資本市場との良好な関係の構築を行っています。

投資家ミーティング
年間 約500

投資家ミーティング年間約500回

投資家の皆さまと活発なディスカッションを行っています。商況などについて適宜アップデートしているほか、当社の本質的な強みに対する理解浸透に努めています。定期的に国内及び欧米やアジアにおける海外ロードショーを行うことで、国内外の投資家の皆さまとコミュニケーションを深めています。

投資家向け店舗見学会
年間 約20

投資家向け店舗見学会年間約20回

ユニーの業態転換店や東南アジアにおける店舗など、テーマ別の見学会を通じて、現場責任者が投資家の皆さまに店舗の状況などについて説明することで、現場の「生の声」をお届けしています。

決算説明会

決算説明会

四半期ごとに決算説明会を実施しています。投資家にとって重要と判断される事項が発生した場合の十分な説明、説明資料の充実、説明会内容を迅速かつ公平にウェブ上で公開している点など、当社のフェア・ディスクロージャーの姿勢は高く評価されています。

各部門リーダーとのディスカッション

各部門リーダーとのディスカッション

アナリスト・機関投資家の皆さまと、当社グループ各部門 リーダーがディスカッションする機会を定期的に設け、 事業戦略の将来性に関する率直な意見交換を行っています。