ビジョン実現に向けた4つのアクション

日本の総合スーパー(GMS)市場は、業界内の売上高トップ企業が利益面で苦戦しているのが現状です。このような状況下において、 PPIHグループは2008年に「MEGAドン・キホーテ」業態の展開を開始して以降、巨大なGMS市場で競争優位性を発揮してきました。
当社グループがめざす「ポストGMS業態」は、非食品と食品部門を、それぞれ強化することで誕生する「最強のフルラインディスカウントストア」という新しい業態です。競合他社の日本型GMSと一線を画した「独自のポストGMS業態」の確立に向けて挑戦していきます。

ユニーグループの完全子会社化

ユニー株式会社は、衣・食・住・余暇にわたる総合小売業として、東海エリアを中心として関東・北陸・近畿エリアに店舗を展開するチェーンストアです。地域に根ざした運営とこだわり抜いた商品の提供により、地域社会になくてはならない存在として長年親 しまれてきました。
 顧客から長く支持されている強固な顧客基盤を活かし、ユニーと当社グループ双方が、企業価値をさらに向上させることが可能であると判断し、2019年1月に完全子会社化しました。

ユニー
ユニーグループの主な事業

生鮮食品や日用品など、普段の生活に欠かせないものを中心にした商品構成で、主婦やファミリー、シニア層などをメインターゲットとした店舗を運営しています。
 また、UCSカードなどのクレジットカードを提供する金融サービス事業など、さまざまなサービスを展開しています。

食品部門で強みを持つユニーグループ

ユニーグループの最大の強みは、食品分野の商品力です。お客さまのニーズや他店の動向を見極めながら価格面で優位性を発揮すること はもちろん、付加価値を感じていただける商品の充実にも努めています。2018年には惣菜の品質向上と品揃え強化に注力する「惣菜プロジェクト」を立ち上げ、惣菜の競争力強化を進めるための体制を整備しました。
 ユニーはオリジナルブランドの商品力が高く、食品部門が収益拡大をけん引しています。今後もユニーグループのノウハウを結集し、食品部門を中心とした高品質なオリジナル商品で差別化を図り、幅広いお客さまのニーズにお応えしていきます。

総合スーパー事業 商品別売上高 (2019年6月期)

総合スーパー事業 商品別売上高 (2019年6月期)

総合スーパー事業 商品別売上高 (2019年6月期)

安全・安心にこだわった「プライムワン」

ユニーが展開するオリジナルブランドの1つである「プライムワン」は、食料品・住居関連品で上質・こだわりを提供する「新生活創造ブランド」です。産地や素材、製法にこだわり、味と品質が圧倒的に優れ、安全性や健康・環境に配慮していることはもちろん、お客さまに手の届きやすい価格で最高の満足をお届けしています。 特にブランド豚とブランド鶏は、ユニー・飼料会社・生産者の三者が協力し、美味しさと安全に自信を持ってお届けする商品です。

飼料開発から生産環境まで、すべて自分たちの目で管理している「悠健豚(ゆうけんとん)」。美味しさを追求したハーブとアマニの独自開発の飼料を使って国内の特定指定農家のみで飼育し、肉の味・質・色の目標値を設定しています。年に1回の精肉検査や定期会議などを徹底し、ブランドの品質が保たれるよう努めています。
環境の徹底管理と丁寧な飼育により、ストレスの少ない環境下で肉本来の旨みを引き出した「悠然鶏(ゆうぜんどり)」。衛生・健康管理の行き届いた生産環境で、定期的な水質検査によって保たれる良質な水で飼育しています。健康志向のお客さまニーズに合わせ、4種類の飼料を成長段階に合わせて使い分けることで、ヘルシーな鶏肉に仕上げています。

ポストGMS戦略の核となる「ダブルネーム業態」

ユニーが運営する既存店「アピタ」「ピアゴ」は、計画に基づき順次業態転換を進め、「MEGAドン・キホーテUNY」「ドン・キホーテUNY」という業態に生まれ変わっています。2019年6月期までに16店舗の転換が完了し、2022年末までに、「アピタ」「ピアゴ」約100店舗を転換する計画です。
「MEGAドン・キホーテUNY」は、ドン・キホーテが得意とするバラエティグッズや日用雑貨品、ユニーが得意とする食品など、両社の強みを発揮することで、商品構成が多様化しました。
その結果、幅広いお客さま層に支持される店舗へ生まれ変わっています。

2018年オープンの業態転換6店舗の業績推移

対象データ:
2018年3月~2019年2月
コンセ除く直営部門実績(横浜大口店/東海通店/座間店/星川店/豊田元町店/国府店)
カード会員年代別構成比の変化

対象データ:
ダブルネーム業態転換6店舗(横浜大口店/東海通店/座間店/星川店/豊田元町店/国府店)
[転換前] 2017年2月21日から2018年2月20日に1度でも対象店舗を利用した会員 [転換後] 2019年3月16日時点の会員

業態転換における新たな試み

転換前と転換後を比較すると、商品構成が大きく変化しました。食品はニューファミリー層を中心に、新たな需要を開拓しながら伸長しており、日用雑貨品や家電製品など、ドン・キホーテ店舗が得意とする住関連商品の売上高構成比が上昇しています。
 一方で、衣料品はさらなる拡大余地があるため、新たな戦略を打ち出していきます(下記参照)。

売上高構成比の変化

ノウハウを融合した衣料品専門店

2019年6月に「アピタ」をリニューアルオープンした「MEGAドン・キホーテUNY鈴鹿店」は、業態転換店舗初の取り組みとして、ユニー直営の衣料品テナント「APITA CLOTHING(アピタクロージング)」を展開。
ユニーにおける衣料品部門のプロ担当者が厳選したアイテムを揃えています。長年当店にご来店いただいていたお客さまのニーズにお応えするため、紳士・婦人・子どもの実用衣料と、ミセスアダルト層をターゲットにした婦人服を取り揃えるとともに、ニューファミリー層のニーズに合わせ、ヤングカジュアルウェア・ファッション雑貨の買い場を展開しています。

PPIHグループの武器は、ほかの小売チェーンには真似できない「時間消費型店舗」を展開していることです。お買い物の「ワクワク・ドキドキ感」を醸成し、リアル店舗だからこそお客さまに感じていただける「魔境感」や「ライブ感」を創出しています。
この「時間消費型店舗」というリソースの強みを最大限に引き出すために必要なのが、IT技術です。普及率が高まっているスマートフォンを有効活用し、店舗におけるお買い物とIT技術を融合させる「デジタル戦略」によって、リアル店舗の価値をさらに高めていきます。

「 majica」会員のビッグデータを活用した「デジタル戦略」

2014年3月からサービスを開始した自社発行型電子マネー「majica(マジカ)」は、国内ドン・キホーテ及び加盟店(一部店舗を除く)でご利用いただけるカードです。年齢制限等は無く、入会金・年会費も不要のため、学生や未成年などの若年層のお客さまから会社員、主婦、高齢者の方まで幅広い層のお客さまにご利用いただいています。また、お買い物金額に応じてプラチナやゴールド会員などのランク特典を導入することで、当社グループ店舗のリピーター増加につなげています。
2019年6月期の会員数は、816万人となりました。この膨大な顧客基盤を活かし、店舗運営における効率性の改善や生産性の向上を実現するため、IT技術と「majica」の公式アプリを融合した「デジタル戦略」を進めています。購買履歴などのビッグデータをもとに、お客さまが楽しみながら便利にお買い物していただけるサービスを開発しています。

サービス開始後の会員数推移

クーポンのダウンロードや、アプリのバーコード画面でお会計やチャージができるカードレスサービスなど、スマートフォン時代におけるお客さまの利便性向上に努めています。

「majica」が、「アピタ」「ピアゴ」全店でご利用可能に

2020年春から、「majica」のサービスを、ユニーが運営する総合スーパー「アピタ」「ピアゴ」において開始します。「アピタ」「ピアゴ」全店で「majica」サービスがご利用可能になるとともに、ユニーの電子マネー「uniko(ユニコ)」の一部サービスを移行することで、当社グループにおける「majica」のご利用可能店舗が600店舗強にスケールアップします。これにより、さらなる購買履歴データの蓄積、活用を進め、お客さまをワクワク・ドキドキさせる店づくりへとつなげていきます。

「majica」会員構成 (2019年6月末時点)

20歳~59歳までの年齢層はほぼ均等に分布しており、幅広い 年齢層にご支持いただいています。男性が最も多い年齢層は40~49歳(男性のうちの構成比24.4%)で、女性は20~29歳(女性のうちの構成比29.3%)と、男女の年齢層のボリュームゾーンに違いがありました。

ビジネスシーンでご利用いただく会社員や、普段の生活拠点としてご利用いただく主婦のお客さまが全体の71%となっています。男性が最も多い職業は会社員(男性のうちの構成比66.2%)で、女性は主婦(女性のうちの構成比45.8%)が最も多く、次いで会社員(同27.3%)となっています。

ウェブ上で商談が成立する「direct商談システム」

IT技術は、当社グループの強みとする「スピーディーな変化対応力」においても重要な役割を担っています。経営にかかわるすべてのサイクルを短縮化し、お客さまや社会の変化に即座に対応するスピード経営を実践するため、IT技術を活用した革新的な取り組みを行っています。 2015年に「direct商談システム」を導入し、パートナー(商品仕入先企業)さまが商談システム上に商品情報を登録するだけで、全国の店舗仕入担当者が、どこにいてもシステムを介して直接商談ができるようになりました。これにより、時間の短縮など効率が改善するだけでなく、仕入担当者が好きなときに自店に合った商品を仕入れることができ、個店ごとの仕入力の強化につながっています。

海外においては、「ジャパンブランド・スペシャリティストア」をコンセプトとした「DON DON DONKI」を展開する「アジア事業」と、地元のお客さまから根強い人気を誇る「米国事業」を展開し、国内で培ったノウハウを活かしながら、競争優位性を発揮しています。  高品質というイメージが強い日本製品や、日本の食文化を気軽に体感できるフードコートなどは海外でも人気が高く、「ジャパンブランド」をテーマにした独自性あふれる店舗は、今後の海外戦略において重要な役割を担っていきます。

米国

「食」のエンターテインメント店舗

2017年12月、シンガポールの商業施設に「DON DON DONKIオーチャードセントラル店」が東南アジア1号店としてオープン。その後もスピーディーな多店舗展開が進んでいます。
 「DON DON DONKI」は、店内を日本製品や日本市場向けの商品で構成した東南アジア向けの新業態です。新鮮で安全な生鮮食品などの生活必需品をリーズナブルな価格で販売するだけでなく、日本の食文化を体験できるフードコートの設置などにより、多くのお客さまからご支持いただいています。
 さらに、2019年2月に「DON DON DONKI」を中核テナントとする商業施設「DONKI MALL THONGLOR(ドンキモールトンロー)」をタイ・バンコクにオープン。さらに、同年7月には香港初出店となる「DON DON DONKI ミラプレイス2店」がオープンし、いずれも大繁盛店となっています。

アジア

ジャパンブランド・スペシャリティストア

2017年12月、シンガポールの商業施設に「DON DON DONKIオーチャードセントラル店」が東南アジア1号店としてオープン。その後もスピーディーな多店舗展開が進んでいます。
 「DON DON DONKI」は、店内を日本製品や日本市場向けの商品で構成した東南アジア向けの新業態です。新鮮で安全な生鮮食品などの生活必需品をリーズナブルな価格で販売するだけでなく、日本の食文化を体験できるフードコートの設置などにより、多くのお客さまからご支持いただいています。
 さらに、2019年2月に「DON DON DONKI」を中核テナントとする商業施設「DONKI MALL THONGLOR(ドンキモールトンロー)」をタイ・バンコクにオープン。さらに、同年7月には香港初出店となる「DON DON DONKI ミラプレイス2店」がオープンし、いずれも大繁盛店となっています。

モバイルフードに特化した業態が誕生

2019年5月、シンガポールチャンギ国際空港において「DON DON DONKISweet potato factory チャンギ国際空港ターミナル3店」がオープンしました。
「DON DON DONKI」業態で人気を博した焼き芋などのモバイルフードに特化したスピンオフ業態として展開しています。
 日本産の紅はるかを使用した焼き芋や大学いも、さつまいもミルクシェイクなど、空港内で気軽に食せる商品を販売しています。

店舗のコンセプトは、「片手に焼き芋、片手にパスポートで旅を楽しもう!」

東南アジアにおける「DON DON DONKI」業態は、生鮮4品(青果・鮮魚・精肉・惣菜)を含む食品売上が8割以上を占めています。
それらのほとんどが日本製品であり、季節ごとに変わる旬の青果が高い人気を誇っています。PPIHグループの海外戦略における最大の武器は「日本の品質や食文化」であると言えます。お客さまから、安全で高品質な日本の食品をどこよりも低価格で購入できる点と、店内調理を含む惣菜の「即食」が楽しめるイートインスペース(フードコート)、季節ごとに変わる日本の味覚や食文化をお楽しみいただいています。

海外における「食」の3つの戦略
商社のような第三者を介することなく、当社グループ自ら貿易業務を行う「直接貿易」によって、輸出入にかかるコストの削減と、柔軟で自由度の高い貿易が可能になり、海外においても「どこよりも安い」低価格を実現しています。
「日本の食文化」をコト消費として提供することで、当社グループらしい独自のアミューズメント型店舗につながっています。日本食を表現する惣菜や、日本産にこだわって取り揃える青果などは、非日常のエンターテインメント商品に化けるのです。
惣菜を「モノ」として提供するのでなく、その場で調理して食べる「コト」消費の体験型店舗を増やしています。イートインによるライブ飲食(オープンキッチン方式)で、店舗のエンターテインメント性とお買い物の体験化を追求しています。
「食」に強いユニーグループの人財が活躍

食品を武器に展開する海外店舗においては、生鮮部門で長年ノウハウを培ってきたユニーの人財の活躍ステージが広がることが、海外事業を加速させるカギになっています。
 中国・上海のアピタで食品部長を務めていたユニー社員が、自ら転籍を志願し、香港の「DON DON DONKI ミラプレイス2店」の生鮮責任者に手を挙げるという事例もあり、海外で活躍できる人財の確保と、現場社員への権限委譲を前提とした、海外店舗運営のパターン確立に努めています。

海外は、日本以上に大きなチャレンジができるステージだと思います。上海勤務の経験を活かして、もっと自分の力を試してみたいと思い、自ら転籍を志願しました。私は「DON DON DONKI」をASEANで一番の店にしたいと思っています。まずは香港で成功をつかみ取れるよう最大限努力し、私自身もASEANで活躍できる人財になりたいと考えています。

PPRM(Hong Kong)
生鮮部門 シニアマーチャンダイジングマネージャー
山口 晋治

日本の食文化を世界に普及させる

2019年4月、首相官邸で「第1回農林水産物・食品の輸出拡大のための輸入国規制への対応等に関する関係閣僚会議」が開催されました。当社の取締役である安田隆夫と松元和博が参加し、アジアにおける農産物輸出に関連する取り組みの状況などを説明しました。
会議では、日本産の鮮魚や精肉が売れているものの、フルーツが圧倒的に人気である点を主張しました。甘さや酸味のバランスを徹底管理した日本産フルーツの品質の高さが、海外で人気である理由です。しかし、輸出元である日本政府の補助制度の拡大や、輸出先である各国の制度の緩和・変更が行われない限り、それらを持続的に実現することは困難であるため、改善を求め政府の協力を仰ぎました。
日本産の農産物の輸出は、自動車産業に次ぐ産業として確立できると確信し、日本の食文化の魅力を当社グループが世界に広めていき、第一次産業の発展に貢献していきます。

タイで多いときに1日2,000パックを売り上げた日本のイチゴ